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古いアパートを出てまっすぐ行けばそこには小さなブティックが。
ドアを開けて中に入れば冷房のひんやりした空気と共にランプが灯るモダンな雰囲気が招いてくれます。
「てんちょさーん、いい服見繕ってくださいなー」
「来たねバグロイド、今日も能天気そうで何よりだよ」
奥からやってきたのは厳かな着物を着たキツめの美人、棗涼さん。
私達の依頼の協力者で主に衣装を担当してくれるんです。
「おお、これが京言葉。微かな会話の中に皮肉を入れるという現地特有のコミュニケーション」
「刺されるからやめときな、あとその手の情報はさっさとアップデートしないと時代においてかれるよ」
仕方ないじゃないですか、アップデートは今はマスター任せなんですもん。
「それで?今回の依頼主はどんなクズ野郎だい?」
「女性をのべつ幕無しに食べつくす系です、そう言うのが好むタイプをお願いします」
「はいはい、となるとこんなのとかどうだ?」
棗さんは手近なモニターをチェックして在庫から組み合わせを検知しています。
「白のブラウスに紺のロングスカート、男受けがいいものさ、これで後はお淑やかに見せればイチコロだよ」
「セクシーポーズとかも考慮に入りますか?」
「むしろ何もしない方がいいね、天然素材のままで十分食いついてくるぞ」
「なるほど、ようは魚釣りという訳ですね!」
「お前ほんとにAIか?とことんアホに見えるぞ」
えへへ、そう見えるのなら今の私には嬉しい事ですねぇ。
少しだけ浸っていると棗さんはスカートの一部を指さしながら話をつづけました。
「それと依頼主の手癖の悪さも考慮してここに仕掛けがある、いざとなったら使いなよ」
「なんだかんだで心配してくれるんですね、ありがとうございます」
「お前がいなくなったらあの野郎から金を回収する方法が消えるだろ、いいからさっさと行ってこい、それから仕掛け使ったら弁償代もかっぱらってきな」
最後は半ば追い出されるように店から出されましたけど奥に消えていく前にどうしても一言だけ。
「それではお仕事遂行してきます」
軽い敬礼と共にその場を後にする、時間はすぐそこまで迫ってますのでお早めに。
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