Ai know world

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待ち合わせ場所は時計とベンチのある小さな公園、時間はまだ早いですが社長相手ともなれば遅刻したら何言われるか分かったものじゃありません。 まったく嫌なしきたりですね、風化してしまえばいいのに。 「さてと、今のうちにこれ使っておきましょうか」 私は今の私が好きですけど相手がそうとも限りませんからね。 SSDを掌の接続口に差し込めば内部に入っていた膨大な単語や嗜好が一気にストレージの中に流れ込んでくる。 「ペルソナデータ、インストール。対象の嗜好の思考に基づき仮想人格を形成」 幸いにも相手が分かればそれに基づいた思考はできる。 こういうのはまだまだ私の方が得意な分野です。 「お淑やか、愛嬌、軽い、アバンチュール、推定、都合のいい女。添え物としての価値」 うーん、大企業の社長ともなるとこういうのが好きなんでしょうか? まぁ私個人の疑問は今はフォルダ分けして隠しておきましょう。 後は出来たデータを自分自身に浸して完成です。 「仮想人格インストール完了、まだかしらお客様は」  そんな風に呟いた頃、向こうから臙脂色のスーツを着た男性が。 身長や体形、それらの細かいチェックを参照した結果あの人が私へ依頼をした人で間違いない。 「君が頼んでおいた娘かい?」 「はい、逢坂藍野です。本日はよろしくお願いします」 軽くスカートの脇を摘まみ恭しく頭を下げる。 マスターから貰ったデータにはこのようなお淑やかな子が好みと合った。 第一印象に刷り込んでおけばきっと気に入れられるでしょう。 「それでは小林様、本日はどのようなプランを所望でしょうか?」 「それを考えるのは君の仕事ではないのかね?」 「お任せですね、かしこまりました」 うーん、いきなり横暴な態度に出てきましたねこの人。 相手を選べないのは悲しい性ですが仕方ありません、犬の糞を踏んだようなものとして処理しましょう。 「では本日の目的を加味しますとウィンドウショッピングなどをベースに表通りの散策などは如何でしょうか?」 「それで構わんさ、なるべく早めに済ませるとしよう」 なんだか周りを気にしているみたいですし、後でデータを確認しなおしてみますか。 もしかしたら後に強請れるネタとかあったりするかもしれませんし。 「かしこまりました、では手を繋ぎましょうか?それとも見せつけるように腕でも組みましょうか?」 「必要のないオプションだ、下がったまま付いてくればいい」 「かしこまりました、それでは3歩離れて影踏まずで着いて行きます」 それきり相手に合わせるようにして歩を進めていく、どうにも苦手ですねぇこの人は。
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