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軽くノックアウトしてから歩美さんが逃げた方向へ向かうとすぐそこの角で彼女は震えていました。
「はぁっ...はぁっ...わ、私、人を......」
「あ、此方に居ましたか」
スッと顔を出すとまた怯えたような表情で後ずさっていきます。
「やめて殺さないで!刺したことは謝ります、もうあの人にも近寄りませんから!!」
「あぁいや、そう言うわけではないんです。それと普通刺されたら人は死にますよ?」
安心させるために刺したであろう所を見せる、そこには多少の傷がついただけの下地が見えるだけです。
「でも私はまぁ人ではないので、この通りへっちゃらなんです」
「あ、貴女は何なの?」
「逢坂藍野、捨てられたやっすい素体に雇い主がプログラムしたAIを積んだ、まぁアンドロイドです。だから気にしないでくださいよ」
「でも、ごめんなさい。貴女を巻き込んでしまって」
「そんなことはいいんですよ、それよりも見せたいものがあるんですからこっち来てください」
歩美さんを連れて元の場所へ戻るとそこにはパンツ一丁で電柱に縛られた哀れなクズの姿が。
「幸久?」
「こいつ金を払わないどころか追加で要求しやがったんでひん剥いてふん縛っときましたよ」
なんか言ってる気がしますがハンカチ詰めたんでフゴフゴとしか聞こえません。
まぁ、お仕置きとしては丁度いいでしょう。後で警察も来るでしょうし。
「どうです?まだこの人に未練とかあったりします?」
「うぅん、無いわ。それに今回のはいい教訓になったもの」
「ほほう、教えてくれます?」
「あら、AIなのに人間に何かを訪ねるの?」
「AIだからこそですよ、私たちは人間の良き友人ですので」
暮らしを豊かにすると言っても結局は使う人次第です、囮に使う人もいればもっと有意義なことに使う人もいる。
私は出来る限りそれを見つけたいんですから。
「なら貴女も覚えておいてちょうだい、騙される方も悪いけどもっと悪いのは人を騙すことだって!」
おぉバッグ一閃、そのまま気を失えばいいんですよ。
「SSDの片隅にとどめておきますね、それとこれを」
懐に手を突っ込み軽く叩けばそこからSSDに似たメモリが排出される。
それを歩美さんの前に差し出す。
「古いタイプのメモリですけどこの中に音声が入ってますので、それを警察に届ければ慰謝料くらいはふんだくれますよ」
勿論中身は編集済み、悪いのはここまで追いつめさせた方だ。
歩美さんはそれを受け取るとやっと穏やかな笑みを浮かべた。
「ありがとう、おかげで私もやっと振り切れそうよ」
「それではこれにて、失礼いたします」
警察が来る前にずらかりましょう、後々面倒になりますし。
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