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「まずは朗報から。ネットニュースの掲示板に書き込みされていた、君の祖父母の住所や伊藤愛梨さんの個人情報はなかったよ」
「愛美、消してくれたんだ……」
薫は安堵の溜息を吐く。
良心からではないかもしれないが、それで良かった。
「しかし、許して良かったの? ネット上の公開はしないにしても、『公開しない』と否定してあげたんだね。もう少し復讐しても良かったと思うけど?」
その話に薫は俯く。
そして、自身の胸の内を話し始めた。
「初めは一生怯えたら良いと思っていたので、いつ公開するか分からないと言うつもりでした。でも、なんか、愛美が電車に飛び込むような気がして……。だから……」
薫の発言に、課長は言葉を失ってしまう。
それは誹謗中傷の被害者ならではの発言だった。
「……そうだね……。彼女もやり直して欲しいね」
「はい」
薫は愛美を思い出す。
薫からしたら、オシャレで積極性があり、いつも自信に満ちている愛美は理想の人だった。
それなのに自分を敵視してくる愛美の気持ちは未だに分からず、多分一生分からない事だと感じた。
「まずはノートにまとめてきたからそれを読んで欲しい」
そこには悠真との十年の関わり、感じていた印象、違和感を感じた事、退職する前の不審点、そしてあの殺人事件についてまとめられた。
「ありがとうございます」
薫はノートを読んでいく。
そこには薫がノートに書き留めた内容と酷似している事が多数あり、課長も悠真に対し同じ印象や違和感、不審さを感じていたのだと分かる。
そして薫が怖くて調べられなかった殺人事件の続報。
それをしっかりまとめてくれていた。
薫がノートを読みながら、自身のノートに書き留めている間に、課長は追加検索をしてくれていた。
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