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3話 愛する彼への疑惑(1)
しばらくすると、外は静まり返っていた。
薫はやっと落ち着きを取り戻し、玄関に向かって歩き出す。
この家の玄関は引き戸のガラス張り。よって、家の中から訪問者の背格好が分かるようになっている。よって薫は玄関を覗くが誰もおらず、慌ててシェリの様子を見に行くと、いつもの大人しい犬に戻っていた。
「何があったの?」
薫はそう尋ねるがシェリは穏やかな表情をしており、先程まで激しく吠えていたなんて想像出来ないぐらいだった。
何物かが侵入して来たのかと思うが、玄関門は触られた形跡はなく、薫は安堵の溜息を吐く。
「ねえ。中、入らない?」
薫は話しかけるがその声にシェリは反応せず、ただ前方だけを見つめている。
こうなると、彼はこちらの言うことを聞かない。
分かっていたからこそ薫は諦めて、家に戻って行った。
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