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その後シェリに家の中に入らないか声をかけるがやはり聞き入れず、日が暮れていく空下で一点を見つめていた。
結局、薫は一人で家に入り散歩で汚れた体を洗おうと洗面所まで行く。服を脱ごうとすると自身が鏡に映っており、その姿を見つめる。
二人の関係がギクシャクして二ヶ月。また一緒に過ごすようになり一ヶ月が経っていたが、まだ本質的には修復出来ていなかった。
以前の平日は仕事帰りにほぼ毎日会っており日曜日は一日一緒に居たが、しかし現在は日曜日にシェリと自然公園に行くのみとなっていた。
薫がどれほど一緒にご飯を食べようとかテレビを見ようと誘っても、悠真は帰ってしまう。極め付けにはあれからよそよそしくなり、こちらに目を向けないどころか、明らかに自分を避けていると分かる。
──別れが近いのかもしれない……。
薄々、分かっていた。
だがどうして良いのか分からず、ただ悠真からの別れ話を待つしかない。この現状がただ苦しかった。
「ワンワンワンワン!」
するとまた玄関より、シェリの吠える声が脱衣所に響いてくる。
彼は大人しい犬で、敷地内に人が入ってくる以外に吠えない。そして呼び鈴は門外にあるのだから、やはり敷地内に見知らぬ人が入って来るのはおかしい。
その事実に、恐怖に震える。
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