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16 誕生日プレゼントには
シエナは今度こそ完全に固まってしまって、次の言葉を紡げない。
身体中のすべての機能が停止してしまったのかと思うほどだ。
「まあ、はいそうですか。とはいかないよな。」
何も言えないでいるシエナに、エストは自虐的に笑って頭をかいた。
「君の嫁ぎ先として王子が挙がっていることも知ってる。
この場には参加できても、王子をさしおいて子爵家の俺と結婚するなんてありえないだろ。」
「………。」
「でも、俺は今持ってるものを諦めても、君が欲しい。」
小さな滝で期待していた言葉だ。もう諦めていた。諦めていた未来が突然提示されるとこんなにも混乱してしまうものか。
「でもそうしたら、あなたの夢は……。」
「俺は魔法が好きなだけなんだ。
君に教えていて気づいたんだけど、魔法を広めることができるのは魔法具だけじゃないんだ。
魔法具は手段の1つであって目的でない。」
「……。」
「魔法具研究で国の支援と引き換えに君を失うなら、手段は魔法具でなくてもいい。
俺は魔法を教えることも楽しい。フリエル家を継ぐのはロビンに任せて、本当にただの家庭教師のエストになる。
どこか遠くの街にいってどこかの魔法学校で働くのもいい。それでも夢は叶うだろ?」
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