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…結局しちゃって、やっぱり痛い。
翌日、朝帰りした私は、あれ以上の事は昂矢に言えず、痛みを堪えながら帰宅した。
ベッドに倒れ込んだ私は、鞄からスマホを取り出した。心配している加奈子の他に、光太郎からメッセージが何通も来ていた。
『返事ないけど大丈夫か?…彼氏出来たのに、俺は真湖を好きだなんて言ってごめん。ほんとはお祝いしてあげるべきだよね。大事に思う気持ちはずっと変わらないよ。』
…何でよ、何でこんな私にこんなに優しくするの?
私は、どうしたらいいの?
運命って何?
…もう、私頭おかしくなりそう。
この時から、きっと私は頭がほんとにおかしくなっていたんだ。
光太郎はほんとに私が好きで、私を大事にしてくれる。きっとあの日も私には何もしなかったんだと確信した。
でも、ここまで身体を捧げた昂矢を…私が思い続けた人を…。
私は自分の直感を信じるのか…それとも…。
私はごちゃごちゃの頭を、ぐちゃぐちゃになりそうな人生を整理するために、何故かこれしか解決策が浮かばなかったんだ。
疲れていた、全てに…。
今思えば、これしか理由は思い浮かばない。
その日の夜。
私は「彼」と待ち合わせたホテルの一室に先に入り、手には包丁を握り締めていた。その手に震えは無く、迷いはなかった。
ガチャっとドアが開く音がし、バタンと閉まった音がした瞬間、私は部屋の陰から飛び出し、彼の胸に包丁を突き刺した。彼はそのまま仰向けに倒れた。
「…ま、真湖…何で…。」
彼はそう呟いて目を見開いたまま絶命した。
私は彼の胸から包丁を抜き取り、血の滴る包丁を握り締めた。
「…やっぱり運命は自分で選ぶわ。ごめんね、光太郎…。私が自分に自信を持つにはあなたは不要。そうなったらあなたも生きてるの辛いでしょ?…行かなきゃ、運命の人が私を待ってるから。」
私は包丁に付いた血を振り払うと、そのまま部屋を出た。
fin.
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