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定時後、18時ピッタリに加奈子は現れた。
「あれ、加奈子。」
朝とは全く違う服装に驚いた。
「私は今日は勝負日だから!」
こんなことになるなら、適当な服じゃなくてちゃんとしたのを着てくるんだった。着替えに帰る時間もなく、私は仕方なくラフなスタイルのまま加奈子に連れられて店に到着すると、既に職場の一つ上の先輩がいた。あまり話したことがない人だったので、会釈して加奈子を真ん中にして座ると、直ぐに相手方も到着して、加奈子仕切りで会が始まった。
人見知りの私は相手方の顔を全然見れないまま、自己紹介が始まり、加奈子がトップバッターに私に振ってきた。私は慌てて立ち上がった。
「あ、あの新垣真湖です。に、23歳です。あ、あの、今日はと、突然誘われて…こんな適当な格好で…す、すみません。よ、よろしくお願いします。」
私は顔を赤くして席に座った。
「…やっぱり真湖か!さっきから下ばっか向いてるから確証出来なかったんだけど。」
私は顔を上げて自分と対角線上にいる声の主の方を見た。
「…こ、光太郎?」
「え、何!?知り合い?」
加奈子が驚いた表情で言った。
「あ、うん。小学校から高校まで同級生で。」
「てことは、新潟でしょ。数年後に横浜でこんな形で再開って、めっちゃ運命じゃん!」
「…運命って、そんな大袈裟な。」
私は光太郎の顔をチラリと見ると、光太郎はニコッと笑った。
「変わらないな、真湖は。元気そうで良かった。」
「あ、うん。…光太郎も。」
私は何故か恥ずかしくなって再び下を向いた。
「じゃあ次私ね。…」
加奈子が自己紹介を元気に始めた。その後、全員の自己紹介が終わると、加奈子が話題を振りながら和やかな雰囲気で会は進んだ。
相変わらず光太郎の方を見れない私は、普段飲まない酒を水のように飲み続けてしまい、流石の加奈子も私を心配そうにしていた。
「真湖、ちょっと飲み過ぎじゃない?」
「だ、大丈夫大丈夫。ちょっとトイレ。」
私はフラつきながらトイレに向かった。正直、ご飯もお酒の味も全く覚えていない。それもこれも全部光太郎のせいだ。だって、あいつは…。
「キャッ!」
フラついた身体を戻す気力もなく、私は後ろに倒れそうになった。
バサッ。…誰かが支えてくれた。
「す、すみません。」
慌てて振り向くと、ニコッと微笑む光太郎が立っていた。
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