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数時間後、私は気が付くと病室にいた。いつ気を失ったか分からなかったが、横を見ると光太郎が椅子に座って居眠りをしていた。
「…こ、光太郎。」
私は呼びながら光太郎の肩を叩いた。
「ん…あ、真湖!良かった、大丈夫か?」
「うん、ありがとう。私…。」
「…詳しくは先生から聞いた方がいいと思うけど、その下腹部に異常があったみたいだ。ごめん、真湖の実家の番号分からなくてまだ家族に連絡は出来てないんだ。」
「そんなの気にしないで。…そう、下腹部…か。」
「…何か思い当たることあるのか?」
私は黙ったまま言葉が出なかった。
「…彼氏出来たらしいな。加奈子ちゃんから聞いたよ。」
私はコクンと頷いた。
「そいつのせい…じゃないよな?」
私はとりあえず首を横に振った。その男は、光太郎も知っている人だとはもっと言えなかった。
「…光太郎、仕事大丈夫なの?」
「真湖がこんな状態で行くわけ無いだろ。…彼氏ができようが、俺の気持ちは変わらない。…てか、変われないよ、10年の想いは。でも彼氏呼ぶなら俺は帰るよ。」
光太郎はそう言って立ち上がった。私は無言のまま、光太郎のスーツの裾を握った。
「…真湖?」
「行かない…で。」
「彼氏に連絡しないのか?」
「…今はいい。光太郎といる。」
私は理由は分からないまま涙が溢れてきた。
「…真湖?」
「ご、ごめん。私…」
「何も言わなくていいよ。」
光太郎はそっとハンカチを差し出した。
「ありがとう。」
「…俺はさ、こうして月日がこんなに流れて、しかも地元と離れた場所で再会出来るなんて、真湖を運命の人だって…そう思ってる。でも、俺は真湖が幸せになれるなら、それが俺の幸せだから。今の彼氏が真湖が感じる運命の人なら、俺はそれを否定はしないよ。…あ、ナースステーションに伝えてくるよ、真湖が目覚めたこと。」
光太郎は優しく微笑んで、病室から出て行った。
…光太郎、そんなに私のことを。
…でも、私の運命の人は昂矢…私だって10年以上想っているんだから。光太郎が私に対して想ってくれてるのと一緒だもの。
ピコン。
枕元に置いてあったスマホが鳴り、手に取ると昂矢からメッセージが届いていた。
『おつかれさま。今日も行ける?今日も真湖を感じたい。』
私はメッセージを見て、ゆっくり深呼吸をした。
そして、少し考えてから返事を送った。
『おつかれさま。うん、いつもの場所でね。楽しみにしてる。』
光太郎が戻ってくると、私はスマホを枕元に置いた。
「真湖、ごめん。今職場から電話あってさ、どうしても職場に行かなきゃ行けなくなった。」
「気にしないで、もう大丈夫だから。ほんとにありがとう。このお礼はまたするから。」
「お礼なんて気にするな。好きな人が苦しんでたら当然の話だろ。じゃあまた連絡する。」
光太郎は、病室から出て行った。
…好きな人…「好き」…か。
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