/// 教国イリオス編

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あのジロと一緒に眠った一夜から10日ほど、やっと落ち着きを取り戻した私は狩りで貯めたお金で大量の調味料などを買い込んだ。 すでにレレオさんには山岳地帯の方に篭るということは伝えてあった。竜人国は行く時と同じように何時でも戻ってきてよいとお墨付きをもらい、ちょっと行ってこようかな?とそんな軽い気持ちで山道を登っていく。 山道を暫く進みかなり高い位置まで登ってきている。そこからさらに深い森に続く、木々が生い茂った獣道へと入っていく。 このさらに先の木々が少なくなる岩場のエリア、そこまでは何度も来ていた。竜を狩りつくす勢いで乱獲していたのは私たちである。もちろん私は一度も参戦させてくれなかったが……せめてダイとユズのタッグに勝てるまではダメとのこと。 どちらか一人でも無理な私は、竜との戦いには一生参加できない事を覚悟した。 そんな岩場の地帯を抜けるとまた木々が生い茂る道へと入っていく。 「うむ」 モモさんが何やら呟いた。そして次の瞬間、モモさんが茨の弦を地面から生えさせた。長く伸びたその弦には矢が二本刺さっていた。 えっ?攻撃されてるの?そう思った時、ジロとレオが私の前に守るように立っている。 「お前たちは!何者だ!」 突然の声にびくっとしながらその声の方を見ると、その木の上に、弓を構える二人の人を発見した。 「ここは!エルフの森だ!なぜ人族がこの結界内にはいれる!」 えっ?結界なんてあったの?てかエルフ! 「結界とはそこの貧弱な魔力の膜のことかのう」 「ひ、貧弱だと!」 さっきモモさんが立ち止まった部分を刺しながら言った言葉に、そのエルフが激怒した!今にも構えた弓を打ってきそう。まあどうせ誰かがその矢をはじくんだろうけど。気を抜きすぎな私。 「だいたいあんな結界などワラワたちには効かぬわ!ワラワたちは魔物だからの!」 「ま、魔物!」 モモさんの言葉に驚きながら二人は弓を連射した。当然のようにモモさんの弦に迎撃される。何本かはクロの糸に捕らわれたようだ。 私は即座にジロたちに「攻撃しちゃだめよ?穏便に!」と声を掛けていく。それは私の『エルフ!もっとお近づきになりたい!』という一心からのお願いであった。ファンタジーの代名詞だからね。 それに、もしかしたら私の魔法について何か分かるかもだし…… そんなことを考えていると、矢が当たらず悔しそうにしている二人のエルフの背後から、また別のエルフがやってきた。そして何やら耳打ちすると慌てた様子でこちらを見る。 「おいお前たち!見逃してやるからさっさと出ていけ!」 「そうだ出ていけ!」 そう捨て台詞を残して、三人のエルフは元来た方向であろう場所を目指して木々を飛び渡り、あっという間に見えなくなっていく。 「あー、もっとエルフと交流したかったなー」 「なんじゃ、森人と話したかったのか?」 「そうだね。私の元居た世界ではエルフって空想上の種族の定番だったんだよね。その空想通りの耳が長くて綺麗な人たちだったから、ちょっとテンションあがっちゃう」 「なるほどね。だがあやつらは気難しいからの。人族とは難しいと思うのお」 やっぱり!あれか?貴重なエルフを奴隷に!みたいなことがあったりしてそれで人族絶対殺すマンになってるのかな!私は少し興奮しすぎていたのかもしれない。 そんな私の耳にもかすかに聞こえる程度の「ぎゃー」という悲鳴が森に響いていた。 「えっ?なに?」 「さっきのエルフの声みたいだな」 クロの言葉に、私はみんなの顔を見合わせる。 「いってみよう!」 私はその声と共に、先ほどのエルフが木々の上を渡っていった方向へと、凄いスピードで進んでいく。当然のようにジロに抱き上げられながら…… 最近ジロの運び癖が出ている気がする。そりゃあ私が走るより早いけど……私がドキドキとするのはきっとこの凄いスピードのせいだ。顔を上げ、楽しそうな笑顔を浮かべているジロをみてそう思った。 「あっ!ジロ!降ろして!あそこでさっきのエルフが襲われてる!」 すぐに降ろされる私。当然私が気付いた時にはもうみんなそのことを認識している。あとは……どうやら私の次の言葉を待っているようだ。 「とりあえずエルフさん達を助けてあげて?」 「はーい」 珍しく先陣を切ったのはレオだった。ジロとクロもレオに負けじと飛び出した。 目の前にいるのは2体の大きな蛇。木の上にいる三人のエルフ達もその鎌首に攻撃を受けているようだった。 そこへレオの地面から突き出る岩の攻撃で悲鳴を上げるその大蛇。2本の鎌首がこちらを睨む。次の瞬間には左の大蛇にはジロの炎により胴体が消滅。右の大蛇はクロの風の刃により3つに切り分けられていた。 その光景を見て動きを止めたエルフ達。 暫く思考停止していたようだが、その後三人で何やら相談をしているように耳打ちを繰り返していた。 「に、人間と魔物の者たちよ。これは、その……助かった。できればちょっと手伝ってほしいことがあるのだが……いいだろうか?」 なるほど。今のを見ての相談ということは、これだけじゃ終わりじゃないような何かがあるのかな? 「みんな。いいかな?」 そう言うだけで私が何を考えているか伝わっている。みんなが頷いてくれたのを確認した私は、そのエルフ達の提案に頷いて見せた。 「そうか……先ほどは悪かった。歓迎する。ここより先はエルフの里、樹の里アールヴヘイムだ」 私はそのエルフ達の話を聞くことにした。
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