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/// 樹の里アールヴヘイム編
「そうか……先ほどは悪かった。歓迎する。ここより先はエルフの里、樹の里アールヴヘイムだ」
私はそのエルフ達の話を聞くことにした。
◆◇◆◇◆
私たちは、助けた三人のエルフの後について足を進めている。もちろんさっきのエルフさん達のように木々を渡ってはいけないので森の中を走る。
ここ最近、魔物の大量発生により連戦が続き、エルフ達は疲れ切っているのだと教えてくれた。先ほど見た大蛇も何度か見たことがあるが、里のみんなの魔法により退けた何度か退けているらしい。
この三人は主に偵察などが任務のため、あまり強力な魔法は使えないということも教えてくれた。
里へ向かう途中では、大きなムカデの魔物が5体にょっきと体を伸ばして飛び掛かってきたが、それはモモさんが茨を伸ばし巻き付けるとぎっちりと締め上げ、次の瞬間にはバラバラとなっていた。
エルフ達はジロ、クロ、レオだけじゃなくモモさんまで強いことに、かなりびっくりしていたようだった。
「あ、あの……あの妖狐の男性も、後ろにいる小さな男の子も女の子も、あとよく分からない角が生えた男性も……みんな同じように強いのでしょうか……」
「みんな、強いかな。あの子たちはそこまで強くはないけど、少なくとも私よりは強いよ……」
私はダイとユズを指さしながら、言ってて少し悲しくなる事実を伝える。
「この群れの主は、あなた様でよいのですよね?」
「まあ一応は、みんな仲間です。そして私のことはマリでいいです」
今更ながらの自己紹介。
ついでとばかりに全員の名前を紹介する。指さししながら何度も確認しているエルフ達。確認に必死なのか時折足が止まる。私は紹介するのは今じゃなかったか、と後悔した。
それでもなんとか「急ぎましょう」と声を掛けて先を急ぐ。そしてあまり高くはない木の柵が設置してある先に、ツリーハウスがいくつもあるのがわかる。その光景に思わずうっとり。と本来はなるのだろう。
しかし、そんな素敵な場所に似つかわしくない存在がすでに見えていた。先ほどの大蛇や大きなムカデ、それに猿やオーガといった人型の魔物まで……エルフ達が魔法攻撃で撃退しているが、ここからでも分かるほど魔物の数が多い。
「みんな、お願い!」
そう叫んだころには、すでにみんなは散らばって走りだし、木の柵を軽々と飛び越えていった。モモさんに何かを言われたダイとユズも行こうかどうか迷っているようなので、そこは私が二人を抱きしめ引き留めた。
このぐらいならきっと大丈夫。そう思ってダイとユズと手をつないでとりあえずはと柵の中までは入る。そしてしばし魔物を狩りに行ったみんなを見守った。
それぞれが魔物たちを瞬殺していく。それを見て唯々戸惑うエルフ達。そして10分ほどで見える範囲の魔物は全て狩りつくされてしまった。
ジロとクロは大蛇と大猿の亡骸を引きずってきていた。やめて蛇とか猿とかちょっと怖い……
多分お肉と思って持ってきたのだろうが、食べるのに躊躇してしまう見た目である。
「ジロ……私、蛇とか猿とかお肉になったとこからしか無理そう……」
私の言葉に少しシュンとしてその大蛇を放り投げてしまった。クロもそれに倣うように猿を放置して戻ってきた。後でエルフさん達がきっと解体するかもしれないので、分けてもらえないかな?と思っていた。
一応ごめんと謝りジロの頭を撫でておく。これで喜んでくれるなら何度でも撫でよう。モフモフ気持ちいい。クロもおいで?撫でてあげるからと思って手を差し出すのだが、プイっと横を向いてしまった。今日はデレはないのか。
そしてエルフさん達のほうを見ると、先ほどの三人が少し老年に見えるおじさま風のエルフとなにやら話をしていた。私たちの事を説明しているのかもしれない。
暫く待つと、その三人と共に先ほどのおじさま風のエルフがこちらにやってきた。
「マリ殿でよいのでしょうか。私、この里の長、シャクラ・タピオ・アールヴヘイムです」
「マリですよろしくお願いします」
シャクラさんは老年な顔が渋くて素敵なおじさまといった風貌で、その姿に似合った低音ボイスに少しだけドキドキしてしまう。
「この者たちに聞きましたが、私たちの危機を聞いて駆けつけてくれたとか……本当に感謝いたします」
「いえいえ。そんな……」
遠慮する私であったが、シャクラさんはそんな私に近づいて……
「この後はお礼に歓迎を宴を開きますので、こちらへどうぞ……詳しい話も聞きたいですし、遠慮なさらずに!」
「え、あっはい……」
手を握られ手慣れた様子でそっと腰に手をまわされる。どうやら私はこのまま村の中へと案内されるようだ。
急なことで戸惑っていた私であったが、ちょっと引きつった笑顔を携えたジロが、シャクラさんの手を払いながら私との間に割り込み、距離を離された。
「ありがとうジロ……ちょっと戸惑っちゃってね……」
私はなんとなく気まずくて軽く言い訳っぽくなってしまう。ジロはすぐに笑顔で私の腰に手を回し、悔しそうに顔を顰めながら歩くシャクラさんの後をついていった。
少し歩くと木々が開けた場所に大きな屋敷があるのが見える。どうやらあそこが目的地?明らかに周りと違う大きさに、多分そうなのだろうと当たりをつけた。
「ここが私の居住する館です。元々里の者を集め集会なども行いますので、しばらく滞在するのも良いでしょう」
「あ、ありがとうございます」
結構グイグイくるシャクラさんにちょっと戸惑う。今もじりじりと距離を縮めてくる感じに、ジロが少しだけ警戒して私のそばに寄る。
「ではどうぞ中へ」
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