/// 樹の里アールヴヘイム編

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三人が洞窟の中に消えていく。そして鳴り響く轟音。 「俺たちも行こうぜ!」 クロが少し嬉しそうに言うので「よし行こう」と洞窟へと足を進める。気分はピクニックであった。私はダイとユズと手をつなぐモモさんに「中どうなってるんだろうね!」なんてワクワクした気持ちで話しかける。 クロを先頭に中へ入ると、後ろのシャクラさんが光輝く丸い球を上の方に浮かべていた。光魔法なのかな?その光に照らされたシャクラさんが少しドヤっていた。 中は10メートルはあると思われる横幅と高さがあり、かなり広い空間になっていた。そしてその先は長く続いているようで奥が暗くて見えない。多分ジロたちが討伐しながらその魔物を回収していると思われる。 多少の残骸を残して魔物たちが一切いないから…… 「もっと急がないと出番ないな」 「そうじゃの」 そう言ったクロとモモさんの歩みが少しだけ早くなる。 きっと先に入った三人が、凄い勢いで魔物たちを駆逐しているだろうことを想像する。 「三人でドンドン進んでるんだからきっと大丈夫だよね!急ごう!」 私はワクワクを胸に走り出していた。もちろんそれに合わせたみんなを追い越すスピードは出ないのだが……むしろ最近2本に尾が増えたダイとユズに「大丈夫?」と気遣われるという中、私たちは先を急ぐ。 「おっ見えてきたな」 クロの言葉の通り、先の方で三人が戦っているのが見えた。 奥にはそれなりの魔物がうじゃうじゃ…… それをレオが天井から床まで岩の棘を出現させてジロとギンの方に突き飛ばす。それを二人が殴りつけ、ジロが手早く回収していった。その後、レオが出した岩の棘は崩れて消える…… うん。見てるだけで大丈夫そう。 それを見てまた散歩気分で速度を合わせてぶらぶらとついていく面々。クロだけは少し残念そうだ。あれじゃあ出る幕がないからね。 その後も淡々と続く洞窟内の散歩する。周りは岩の壁。目の前には魔物を討伐する三人。とても散歩とは言い難い光景だけどまあいいかと思ってしまう。 そのまま進み続けること30分。急に魔物の群れが途切れる。どうやらそろそろ打ち止めのようだ。 そのまま進むとさらに広がった空間の入り口で三人が立ち止まっていた。私はそのジロのところまでたどり着くとその先を覗き込む。 数十匹のオーガと大猿がこちらを警戒するように立っている。そして中央にはひときわ大きな黒いオーガが胡坐をかいてこちらを睨みつけていた。胡坐をかいていても他のオーガたちより顔の位置が高いのだからきっと倍以上はあるだろう。 すると先頭を進んでいた三人にクロが加わり何か話をしている。そして唐突に始まるじゃんけん……何をやってるのだろうか…… そんな緊張感の欠けた雰囲気の中、チョキを出した腕を高く上げ喜んでいるクロを微笑ましく見る。よかったねクロ。さっきまで暇そうに不貞腐れてたもんね。 そこからは四人の動きは速かった。黒いオーガの周りにレオの岩の棘が出現して周りとの距離が開く。そこに飛び込んだジロとギンが襲い掛かってきたオーガと大猿を拳で吹き飛ばす。そしてクロが黒いオーガと対峙する。 「ああ、そういうことか」 どうやらクロと黒オーガで対決するようだ。 まずはクロが先制の風の刃を飛ばす。それは片手ではじく黒オーガ。ちょっとだけ腕に傷を負い顔をゆがめる黒オーガ。クロも弾かれたことで不満そうに見える。 もう一度、とクロが二つの風の刃を飛ばしながら横に回り込んで殴りつけようとするが、それには風の刃を躱した黒オーガが反応する。 正面からの殴り合いになっていた。といってもクロの方は黒オーガの拳を躱しながら殴りつけていた。「カウンター攻撃!」と声を上げてしまった私を許してほしい。こんな感じのガチバトルになるのは初めてのことだから。 いつも結局魔法でドーンって感じで終わってたらね。 それでも一方的にクロの拳を受け、そして時折風魔法による裂傷も加えられる状況で、徐々に黒オーガの動きが鈍くなっていく。すでに周りの魔物を瞬殺していた三人も温かい目でその戦いを見守っていた。 そして黒オーガが膝をついたこころで、その首はクロにバスンと刎ねられた。人型の魔物にその仕打ちはちょっとグロい。それなりに慣れた私も少し顔をそむけてしまった。 「ふう」と息をはくクロがこちらに戻ってきた。 「これで数十年は大丈夫であろうな」 「そうなんだ」 とりあえずこれで一安心。しばらくは竜を狩るのもOKっぽい。あまりの戦いにまだ動きを止めているエルフの三人に声をかけ、洞窟の入り口まで早足で戻る。 洞窟を出ると少しだけ空気の美味しさを感じていた。やっぱり閉鎖空間だと息苦しさを感じるからね。 深呼吸して空気のおいしさを堪能している中、ジロが私を抱き上げ洞窟から離れる。周りのみんなも同じように距離を取った。エルフ達はクロが蜘蛛の糸でまとめて簀巻にされて運ばれた。 『おまえたちは誰だ!』 大きな声がお腹に響き少しだけびっくりするが、それよりも今はいきなり抱き上げられたことで私の心臓は忙しく自己主張をしているのでそちらに構っている余裕はない。 ドクンドクンと高鳴る胸をおさえながらもジロに「もう降ろして」とお願いする。 ゆっくりと降ろされ、やっとその声の方を確認する。そしてさっきまで入っていた洞窟の上にいる、大きな猿たちの群れを視界に収めることになった。それと同時にジロがその大猿の群れから私を守るように前へと移動した。 今までみんなが楽々倒してきた大猿の3倍は大きな猿。その周りには普通サイズの大猿。また私の中の常識がおかしくなった。普通サイズの大猿ってなんだろうね。じゃあ真ん中にいるのは大大猿か? またどうでも良いことを考えている私。ジロたちがいるとつい気が緩んでしまう。
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