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「水筒持った?、スマートウォッチ…は腕についてる。スマホスマホ!…んーと、クリアファイル。それと、『お話ノート』。よし、完璧」
手際悪く、持ち物の最終確認を済ませた。
ゆっくりと、ドアに手を掛ける。
緩く巻いた髪が、さらりと頬にかかった。
先程から高鳴っていた心臓が、より激しく脈打つ。
「~~っ」
大きく息を吸い込み、
「ふうぅ~~」
苦しくなるまで吐いた。
さあ、行くぞ。
「ニャオーン…」
どこからかか細い声が聞こえた。
人並みに混ざって、その声はゆっくりと溶けていった。
「ニャー…」
また。
今度は掴んだ。はっきりと。
狭い路地を少し入り、ゆっくりそちらへ歩み寄る。
「ニャ…」
短く鳴いたそれは、私が恐る恐る伸ばした指に、その柔らかな毛を押し付けてきた。そして、ざらりとした舌で躊躇もなく舐め回す。
私は、それのふわりとした毛をなぞって、大きさを確かめる。
「子…猫?」
子猫が舐めていた舌を引っ込めて、「ニャアン」と甘えたような声を出す。喉が、グルグルとリラックスしたときの音を発した。
「…よいしょ」
私は何とか子猫を持ち上げた。この子猫は捨て猫なのか、よく懐いていた。私が前足を毛をなぞって探しても、全く嫌がらなかった。
とにかく、連れていこう。
今日は学校には連れていけないけれど、三宅さんになら面倒見てもらえるかもしれない。
私は軽い足取りで駅へ急いだ。
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