私、目が見えません

2/2
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
 でも私はなぜか体調を崩さなくて、それが今、反動しているところだ。疲れていたせいで体の反応まで鈍ってしまったみたいだけど、ちゃんと体調は崩した。そのことは嬉しいのか嬉しくないのかよくわからないけど、今はとりあえず合格できたことが嬉しくてたまらない。  それで私は、晴れて今日から盲学校教師になった。  23歳の新任盲目美人女性教師の誕生だ。  なーんて。 ちょっと調子に乗りすぎたけど。  でも私が、目が見えないのは本当だ。  生まれたときから先天緑内障という目の病気で目が見えなくて、 ずっと何も見えない世界で生きてきた。いや、そもそも「見る」という感覚、概念がなかったのだ。  それでも私の世界は、真っ暗じゃなかった。  本当だ。  物理的には目に光が届かない(そもそも目という器官がない、つまり眼球摘出をした)から、真っ暗に思えるはずだ。普通の人でも、目をつぶれば真っ暗になるのと同じで。  私はこの世界がどんな風なのか、言葉から想像することしかできない。でも、まわりの人たちが私に伝えようとしてくれてる世界は、その人たちには見えてる。そしてそれが、私には伝わってるんだ。  だから、見えてる。  私には、みんなが教えてくれた全部が、見えてるんだ。たとえそれが、みんなが見てるのとは違っても、私は私なりに、世界を見てる。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!