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太陽神の道
ひまわり畑につくと、お母さんはポケットから麻紐を巻いた玉を取り出した。
「さて説明します。この迷路はおばさんの故郷の沖縄に伝わる『ティダ(太陽神)の願い舞』と言うものなの。
願い事を唱えながら太陽の環の動きをあらわす踊りを舞って、その足跡に沿ってひまわりを植える。
少しずつ太陽に向かって伸びるひまわりを見ながら、収穫が終わるまで、毎日一度その道を、願いを唱えながらなぞって歩く。
収穫が終わると願いが叶うと言われているの」
みんな真剣な顔で聞いている。特に隆とノリコは。
「でも、この舞は環が幾重にも重なった形で踊るから、すごく複雑で雑誌なんかにある四角い迷路みたいにはいかないの。
だからこの麻紐玉をつかいます。そうやって、おなじ環を回り続けて出て来れなくなるのを防ぐのよ」
「あ、それギリシャ神話に出てくるダイダロスの迷宮ですね。
迷宮の奥に住む、ミノタウロス退治に来たテーセウスのために、ミノス王の娘のアリアドネが彼に糸玉を渡して、迷宮で迷わないで帰れるようにするの」
トキコが叫んだ。さすが作家志望、だてに本は読んでない。
「その通りです。紐を垂らしながら進んで、糸が重なりそうになったら別の道を選ぶ。この繰り返しで、ぐるっと回って入り口に戻って来れたら、太陽神の舞いを踊った事になるから、願いが太陽神に届いた事になるの。
でも神様は気まぐれだから叶えてくれないかもしれない。それでもやってみる?」
「はい」
みんな揃って返事した。
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