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プロローグ
ついていないときはとことんついていないものだ。
二十六歳のシステムエンジニア・根岸純にとって、この日の朝は散々だった。
自分によらない不運が重なったこともあるけれど、それにしたって今日はひどい。
まず、スマホのアラームがうまく機能せずに寝坊した。
この日は普段より早めに出社しなきゃいけなかったから、時間を変更してセットしたはずなのに、なぜかオフになっていたのである。
これはおそらく機械のせいではなく自分のミスだから文句は言えない。
出社ギリギリの時間に目が覚めたのは奇跡だが、急いで家を出たから朝食にはありつけていない。
駅までの道を走っている途中で、ネクタイが必要になるということを思い出した。
今日は午後からお客様先へ行く予定で、その準備があるから早めに家を出たかったのである。
走りながらカバンの中を確認したが、やはりネクタイは忘れた模様。
家に戻る余裕はないので、コンビニで買うしかない。実に不要な出費である。
そして駅に着いたところで、これから向かうホームから電車が出発していくのが見えた。
まだ時間はあるはずだと思ったのだが、一本前の電車が少し遅れていたようだった。
それゆえ、乗りたかった電車も若干遅れて到着し、この時点で絶望的に遅刻ムードだった。
車内も混雑していて、当然座れそうもない。出勤前なのに疲労感が半端じゃなかった。
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