エピローグ

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「あったら言ってるよ」 「小声で言うな! より悲しくなるわ!」 「じゃ、ごゆっくり~」  最後はとてもいい笑顔を見せて、樹里は颯爽と去っていった。  その後ろ姿が見えなくなるまで見送ってから、純は席を立って樹里がいたポジションに移動する。 「なんか、すみません」 「えー、いいじゃないですか。私は全然、気になりませんよ」 「それならいいですけど……。え、あいつ何か、余計なことは言ってないですよね?」 「もちろんです。お兄ちゃん想いのいい妹さんですね」  そんな感想を抱く要素がどこにあったのか、純は不思議でならなかった。  三人で話していたときにそんな会話はなかったはずだ。 「純さんの前では決して言わないんでしょうけど、樹里ちゃんはちゃんと、純さんのいいところを教えてくれましたよ」 「マジですか? え、何を言ってたんです?」 「それは言えません。純さんに言ったら、すぐに樹里ちゃんにも伝わるでしょう?」 「言いません! 僕はあいつと違って口は軽くないんで」 「じゃあ、ひとつだけ。このことはきっと、お兄ちゃんの耳には入れたくないでしょうから、絶対に秘密にしてくださいね」  そう思いながらも教えてくれるあたり、美咲の口は堅くはなさそうだ。  今後は妹に関する過度な発言は控えようと、純は内心で警戒することにした。
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