夜焚きに至る-よたきにいたる-

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「なんで──っ」  なんで影は、俺をここに追い込むんだ!? 影はまだ迫ってきて、俺は廊下を後ろ向きで進む。  廊下の中ほどに差し掛かったころ、人間の頭ほどもある、ほのかな青い光を視界の端に捉える。  それは一つだけじゃなく、俺の周りを幾つも囲んでいた。なんだこれはと思ったとき、俺はハッとした。  空き地の前にあった廃屋の怪談話──あの青い炎がこれなのか? ああ、そうだ。これは光じゃない、炎だ。  ゆらゆらと、ロウソクの炎のように揺れている。どうしてこんなところに?  ふいに、取り壊された廃屋では、肝試しの奴らは行方不明者がほとんどだか、数人は死んで見つかったと近所のおばさんたちが言っていた事を思い出す。  ここの家族は、恐怖を貼り付けた顔をして死んだ。異なるように思えるが、実は同じなんじゃないのか。何故だかそう思える。
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