夜焚きに至る-よたきにいたる-

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「はっ……。はっ……」  小刻みに吐く息が白い。まるで、真っ黒い目から冷たい冷気が足元に流れているようだ。黒い影の恐怖に息も絶え絶えになりながらも、俺は思考を必死に巡らせた。  横目に、少し開いている障子の隙間から和室が見えた。ほんの数センチの隙間から、何かがこっちを見ている。  なんだ? 誰かいるのか!? 「た、助けてくれ!」  振り絞り助けを求めたが、それもすぐに無駄だと悟った。そう、こちらを見ている誰かは、と気づいたのだ。  生気の無い顔の、その首元には幾筋ものひっかき傷があった。 「そんな──!?」  なんで俺がこんな目に!? こいつは、家がなくなったから、こっちに移ってきたのか? そのために、ここの家族を!?  そうだ、行方不明と死亡者の違いはなんだ? なんなんだ!?
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