夜焚きに至る-よたきにいたる-

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<やっほー! 元気してる?> 「お前も元気そうだな」  携帯から聞こえてくる久しぶりの妹の声に、変な笑いが口から漏れる。二つ年下の妹は、高校を卒業したら地元で就職した。 <まだバイト?> 「ああ。残念ながらなー」  就職出来てたら真っ先に親に報告してる。 <大変だねえ> 「おまえこそ、そっちにいて楽しいのか? こっちに来ればいいのに」  可愛いのだから、モデルで人気者になれるのにと残念がっている俺をよそに、本人は興味がないのかヘラヘラしている。 <楽しいよ~。私のことより、兄さんはどうなの> 「まあ~……。のんびりやるさ。それより、母さんたちはどうだ?」  俺は成人してしばらくは地元で働いていたが、一年前にこの町に越してきた。  田舎から上京し、家賃の高さに愕然として都心から少し離れたこの場所を選んだ。  人口が多いのだから何かしら仕事はあるだろうと、半ば着の身着のまま電車と新幹線を乗り継いで東京に辿り着いたが、色んな意味で想像以上だった。  特に理由もなく上京した身としては、とにかく働かなくてはならない。就職活動を続けながら、レストランの厨房で調理補助としてバイトしている。  人手不足で仕事はあるはずなのに、受からないことが謎だ。  
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