夜焚きに至る-よたきにいたる-

7/12

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「それでねえ」  それだけでも怖いと思えるのに、おばさんの口からはさらに恐ろしい話が紡がれた。  おばさんは顔を近づけて、俺の他は誰も聞いていないのに、小声でささやくように「みんな、窒息して亡くなってたらしいのよ」 「え?」 「苦しそうに首をかきむしってて、干からびてたんだって。体中の水分がほとんどなかったみたいよ」  あまりにもの形相に、刑事たちも驚いて思わず後退(あとずさ)ったとか。 「事情を聞くために彼女の家に行った刑事さんたちね。発見したときの状況を聞き出すのも大変だったらしいわよ」  第一発見者の女性は、とにかく怯えきっていて、今も家から一歩も出てこず引きこもっている。 「そうなんですか」  そんなに怖い光景だったのかと、聞いた俺はゴクリと生唾を飲み込んだ。おばさんは話した事で満足したのか、すぐに家に戻っていった。  そうして、門の柱に規制線の張られた家には視線を向けず、空き地の穴をぼんやり眺めて足早に通り過ぎた。  
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加