第1章~選択~

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ある日の収穫の日。 大空も畑作業をしていた。 「そういえばそのうち、豊ん家に ズッキーニとキャベツとか 野菜適当に持ってってくんね? 俺明日から、壮大(そうた(息子))の 野球の試合とか色々あって、 行けねーからさ。 まぁ豊も行くから 居ねーかもしれんけど、 適当に置いてくりゃいいし。」 つばさは、わかったと言って 数日後、豊の家へと野菜を持って行った。 「ピンポーン」 玄関先のチャイムを鳴らすと 家の脇にある小屋から豊が顔を出した。 「おー大空の妹か!久しぶりだな! 良い女になったじゃねーか! 今度一緒に飲み行くべ!」 豊はいつも、つばさや未来に 気さくに話しかけたり 優しく接してくれていた。 たぶん誰に対しても そういう人なんだろう。 年齢性別問わず、 色んな人が豊の周りには いつも集まっていた。 「お疲れさまっす! いつもたくさん魚介類貰ってばっかで すみません。 ありがとうございます! 良かったらこの野菜貰ってください。」 つばさは軽く会釈をして 野菜の入った段ボールを 豊の横にあったテーブルに置いた。 久しぶりに会った事もあり、 話に花を咲かせて居ると 家の玄関が開き 子供を怒鳴り付けながら 豊の妻、沙織里(さおり)が出てきた。 怒鳴り付けて居る姿を見て つばさは若干引いたものの、 自分達夫婦に まだ子供が居なかった事もあり 子育てはこういうものなんだろう。 と思ってしまった。 少しすると苦笑いしながら つばさの所へ沙織里が近づいてきた。 と、同時に豊が元居た小屋とは別の 少し離れた小屋へ入って行く。 つばさは多少の違和感を感じたが 沙織里の言葉に返事をするしかなかった。 「恥ずかしい所見られちゃったね。 ごめんね。」 「いえいえ、大丈夫です。 子育て大変そうですね。 豊さんに久しぶりに会ったから 話込んでしまって・・・。 さっさと帰れば良かったのに すみません。」 「あ、野菜ありがとう! 姑が作った野菜より 大きいし美味しいから助かるよ! あの人がもう少し子育てに 協力してくれれば良いんだけどね。 自分の事しかしないし 都合悪くなるとすぐ逃げるし もう最低最悪だよ!」 [[そんな風には見えないけどな・・・]] 心の声を口にしないように 気をつけながらつばさは話した。 「子育てする母は自分の時間を 作った方が良いって 聞いた事ありますよ? 旦那さんや、姑さんに 子供預けて出かけたり 気分転換してみたらどうですか?」 「その辺はできてるとは思うんだよね。 下の子も幼稚園入ってるし 割りと自由な時間はあるんだ。」 優しく笑いながら話す沙織里に つばさはどこかホッとしていた。 しばらく他愛もない話をして つばさが帰宅すると 登録していたSNSの 通知が届いている事に気付いた。 豊の妻、沙織里から 友達申請が来ていた。 承認し、ページを見に行くと 投稿のほとんどが豊の悪口や 子供の同級生の親の悪口ばかりが 書かれていた。 少し目を通したつばさは、 気分が悪くなり 静かにSNSを閉じ見なかった事にした。
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