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「これは、『実在したイカロス』
そう名付けたんだ。」
優しい声で
ふんわりとつばさの肩に手を添えてきた
50に満たないほどの痩せ型の男性。
その優しい声と手の温かさで
現実に戻ってきたかのようなつばさに
彼は優しく微笑みながら話始めた。
「この写真はね
仲間と3人で世界中を旅した時
仲間の1人を病で失った翌日に撮れた
写真なんだよ・・・
きっと彼女がイカロスに替わって
大空を飛び天国へ行った・・・
私達が勝手に
そう思いたいだけかもしれないが
それと同時に
そうであって欲しいとも思う
そんな1枚なんだ・・・
ふふっ
気に入ってくれたかな?」
つばさはまた
写真を見つめながら答えた。
「とても素敵です。
他の写真も素敵だけど
この写真は何故かそこに
ちゃんとした意志があるような
何かこう私を見てと言わんばかりの
何か・・・
上手く言い表せれないけど
たくさんの人々に見てもらいたい
たくさんの人々に知ってもらいたい
そんなメッセージが
伝わってきた気がしました。」
彼は驚いた顔で目を見開き言った。
「いやぁ・・・
ははっ・・・驚いたな・・・
生前、彼女が言っていた言葉と
同じだったから驚いてしまったよ。
ははっ
・・・彼女もね、生前
言ってたんだよ。
『自分の撮った写真を
たくさんの人々に見てもらいたいんだ
知ってもらいたいんだ』ってね」
嬉しそうに見える彼は続けて話す。
「君、名前は?聞いてもいいかな?」
つばさは自分の名前や
隣町から来たことを話した。
来月には隣県で
世界各地の人々をテーマにした
展示会をすると聞いたつばさは
必ず行くと彼に伝えると
彼は財布から特別招待券を
2枚取り出し渡した。
「良かったら是非また
話す機会をくれないかな?
もちろん君が嫌でなければだが。」
笑顔で是非と答えたつばさに
名刺を渡し小さく手を振ると
どこかへ歩いて行ってしまった。
「何?知り合い?」
不思議そうな顔で
つばさの顔を覗き込んだ沙織里に
チケットを1枚渡し
また一緒に行こうと約束をしたつばさ。
その後も残った写真を見るが
つばさはやはり
イカロスの写真が忘れられなかった。
カフェに寄り
パンケーキとコーヒー、
ジェラートを食べながら
2人は写真の話ばかりして
帰路についた。
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