第1章~選択~

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それからの2人は写真、バイク、 趣味が合う事で メールする頻度が増していき、 月1で遊ぶようになっていった。 翌月開催された隣県の展示会に つばさが運転し、沙織里は後ろに股がり バイクに乗って向かった。 朝早く出発した為、 つばさは少し不安だった。 「沙織里さん、朝大丈夫でしたか?」 「ん?何が?」 「出荷準備とか子供の事とか。 ほら今日、平日だし。 家の事とか朝早かったから 出来なかったんじゃないかなって、 ご家族に迷惑かけてないか 心配で・・・」 「大丈夫、大丈夫!! 家事はほとんど姑がやってるし 出荷準備とか子供の事とか旦那もやって 両立の大変さに気付いたら良いよ!!」 笑顔で言う沙織里につばさは そういう家庭なんだろうと思った。 そんな話をしながらランチを終えると 展示会へ向かった。 入り口に見覚えのある男性がいた。 警備員の人に飲み物を渡し 立ち話をしていた彼は 今回のチケットをくれた男性だった。 つばさはお礼を踏まえて挨拶をしようと 彼に近付いて行くと向こうも気付き 警備員との話を切り上げ近付いてきた。 「やぁ、この間の2人だね。 来てくれて嬉しいよ!ありがとう。 ゆっくり見ていってね。」 「この間はチケットをくださり ありがとうございます。 またお会いできて嬉しいです。」 挨拶もそこそこに館内に入ると 1階の展示ホール中央に ギリシャの人々の笑顔が たくさん飾られていた。 1階はギリシャの街並みや 人々の暮らし 町外れののどかな風景がメインだった。 どれも素敵で 人々の笑顔には撮る側の人柄も 感じ取れる程だった。 2階に行くと 昔のギリシャと 今のギリシャが 並んで展示されていた。 戦争があった時代の建物が 今は綺麗に片付けられていたり 修復されていたり 感慨深いものがあった。 《壊すのも人間、作るのも人間》 つばさがそう思っていると 沙織里が近付いて来て言った。 「人間って最低な生き物だよね。 他人の生活を簡単に ぶち壊すんだもん。 不倫とかもそうじゃん? そんな理由で殺すとかさー 戦争は全く関係ない人達が 犠牲になってさー 可哀想しか出てこないよねー」 そうだねと苦笑いを向けたつばさは 悲しさでいっぱいだった。 前日まで幸せいっぱいだった人が 簡単に悪魔に変わってしまう。 具合が悪くなったつばさが 外に出ると、あの人が居た。 桐生 明人(きりゅう あきと)。 暗い顔に見えたのか 桐生はつばさにごめんねと言った。 「ごめんね? ・・・2階は辛かったよね・・・」 「・・・大丈夫です。 たぶんだけど 大事な事なんですよね・・・ 忘れないように・・・ 同じ過ちを繰り返さないように・・・ 伝えたい気持ちは 伝わりましたから・・・」 つばさが話ながらベンチに座ると 桐生は静かにありがとうと言って 同じベンチに腰を掛けた。
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