第1章~選択~

6/8
前へ
/10ページ
次へ
連絡先を交換して 何気無い話をしていると 沙織里が楽しそうな顔で出てきた。 「何か良い事でもあった?」 つばさの問いに沙織里はごまかした。 「別に?今回も良い写真あったよね。」 この時につばさは気付くべきだった。 彼女がとんでもない悪女だった事に。 しかし気付くどころか、疑いもせず どんどん仲良くなっていった。 つばさと沙織里は 桐生にお礼を言ってその場を後にした。 それから月日が流れ つばさが27歳になった年の事だ。 つばさは月の物が来ていない事から 検査薬を使った。 陽性。 勝矢とつばさは涙し喜んだ。 学生時代から付き合い 高校卒業と同時に結婚。 結婚してすぐ妊娠しずらい事が判明。 精密検査を繰り返し タイミング法で経過観察。 今年ダメだったら人工受精をしようと 考えていた矢先の出来事なだけに 喜びはひとしおだった。 翌日、産婦人科を受診すると 初期すぎるという事で追い返された。 二週間後、 また産婦人科を受診すると 超音波とエコーをやって ようやく赤ちゃんの心音を 聞く事ができた。 思いもよらず双子だった。 帰ってすぐ夫に話すつばさ。 夫婦で相談し翌日、 つばさは大空に報告した。 家族全員に止められ 出産まで大空に仕事を任せ つばさは休む事になった。 どうしても仕事がしたいつばさは 無理しない事を条件に 力仕事は出来ないものの 事務作業はやることにした。 「・・・暇だ・・・」 そう呟くつばさに夫の勝矢は優しく 笑い、声をかける。 「ありがたい事じゃん。 お義父さんもお義兄さんもお義母さんも 皆、心配なんだよ。」 「そうだけどー。 まぁ一回流産してるから余計ね、 心配なんだろうけど・・・」 不満そうなつばさを宥めるように 勝矢は言い聴かせる。 「婦人科の先生も言ってたじゃん。 今が一番、流産しやすいって。 安定期入ってからは その半分の確率だって。 命を産むには大きなリスクを伴うから 休めるなら休んだ方が良いよ。」 《また無理して流産したら・・・ 勝ちゃんまた悲しい顔するよね・・・》 「大丈夫。 無理はしないし、 じぃちゃんばぁちゃんとも 約束したから。 ちょっとでも具合悪くなったら 誰かにすぐ相談するって。」 つばさと勝矢は笑顔でおでこをくっ付け お互いに愛を囁き眠りについた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加