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 彼と初めて会ったのは、職場のデパートだった。会ったというか、通りすがりに見かけただけだけど。  あまりにカッコよくて驚いた。なんというか、存在がオシャレなのだ。彼を取り巻く空気には、マイナスイオンが漂っているように見えた。  彼のまわりに集まるのも、キラキラした人たちばかり。類は友を呼ぶ、とはよくいったものだ。料理しかできないうえ、図体ばかり大きい私とはまるで違う。  初めから、手の届く相手だとは思っていなかった。だけど、もしかしたらいつか想いが届くかも……なんて夢を見るのは自由だと思っていたのに。  ある日、私はお(つぼね)様から衝撃的な助言を受けた。 「あんた、あの男はやめなさい」 「えっ! なんでですか?」  ()き遅れの彼女は憐れむような目で私を見て、恐ろしいことをさらりと言った。 「あんたたちはそういう運命なの。もしも一緒になれば、世界が暗闇に包まれることになる」 「そんな……」  いったい何の因果だろう。助けを求めて周りを見渡せば、先輩たちはみんな、気まずそうに目をそらしてうなずいていた。  嘘やでまかせではないらしい。  量産型女子だと思っていた自分に、そんな宿命が課せられていたなんて。  ショックだったけれど、考えてみれば彼と私が一緒になる可能性なんて、ゼロに近いのだ。これからも、遠くから見ているだけなら大丈夫。  そんな私の考えをあざ笑うように、運命はまわる。その後間もなく、私と彼はなんと、ひとつ屋根の下で暮らすことになったのだ。
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