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白い 運命
【運命は白くて無垢で飾らない】
〜ジライ・カホ〜
これは私のクラスメイトである、時来 花歩 の言葉だ。
誰かの名言チックにノートに記録する。
現在私は花歩に恋愛相談をしている、金井 有栖(かない ありす)の話しを盗み聞きしている。
盗み聞きと言うと聞こえが悪いので少し言い換えさせてもらおう。
現在、私こと喜来 三玖(きらい みく)は生き甲斐とも言える唯一の趣味である人間観察中なのだ。
ついでに一つ言わせてもらえれば、放課後教室に意味も無く、理由も無いのに残っていたら勝手に恋愛相談が始まってしまったのだからしかたがない。
私も、基本忙しいけれど明日の小テストを思い出したから少し復習をしておかないとと思い、しょうがなく教室に残っているのだ。
全くもって、早く帰りたいのに。
もちろんウソだ。
他人の恋愛相談ほどカロリー高めの甘味は無い。
この恋愛相談も、元はただの雑談だったのだがいつの間にか、有栖が花歩のペースに乗せられてしまったようだ。
現状、たまたま聞こえてしまった状況を整理すると。
そう、金井 有栖には好きな人がいる。
同じクラスの 有馬 圭吾(ありま けいご)。
高校1年生の頃、ある事がきっかけで恋に落ちて以来、2年の現在に至るまでずっと片思いを続けているらしい。
「有栖(ありす)は、もっとガンガン攻めて良いんだよ!恋愛なんて誰かに気を使うモンでも無いんだから。」
花歩が有栖に向い語気を強める。
(もう少し音量を抑えた方が、良いんじゃないか?
存在感を消しているとは言え、いちよう私が居るのに、、。)
「えぇ。だってぇ。無理だよぉ。私なんか。」
「どうせ、あの子のコトを気にしてるんでしょっ?」
(あの子?
おやおや、一体誰の事なんだい?
気になるじゃないの。)
「え、いや別に、、」
「気にしてるんでしょ?」
「そんなこと、、、」
「ほんとぉに?」
「ごめん、、ちょっとは、、気にして、、ます。」
「ほら見なさいっ。」
「うぅ〜。」
「別にあんなの気にしなくて良いんだからねっ!」
「そんな事言ったってぇ。あと、そんな言い方しなくたって」
有栖は、机にうなだれる様に突っ伏した。
(なるほど、2人でいる時の花歩はアネゴ属性で有栖はおっとり控えめな属性な訳ね。
好感が持てるし、正直これは推せる。)
「まぁ、南(みなみ)ちゃんは良い子だけどぉ」
花歩が腕組みをして眉間にシワを寄せる。
(南?誰?どこの馬の骨だ?)
「そうだよぉ。南ちゃんは良い子で可愛くて、、、しかも」
(しかも?)
「あんなの運命としか言いよう無いよっ!」
(ななな!運命だと?なんて陳腐な言葉を使うだこの子も)
「んー。まぁなぁ〜。気持ちは分かるけどぉ。まぁ気にすんなっ!」
(アネゴぉ〜。)
(でも何が運命なのさ、誰か説明してっ!)
「気にするよぉ〜。だって、有馬君と南ちゃんは幼馴染でしょ、中学で別々になったのに高校で再会したし」
(まぁ、そのくらいあるでしょ。ちょっと弱いな)
「それに、通っている塾も一緒で選択授業もいつも偶然一緒だし、くじ引きで班決めする時も一緒だし、文化祭の踊りもランダムのはずなのにペアだったし、家は近いし、この前なんか休日たまたま図書館でばったり会って一緒に勉強したんだって。」
(ん〜。なかなかだな。ガチガチ過ぎるでしょ)
「それに、、、南ちゃんは有馬君が好きだし。」
(カンカンカンカンカン。KO)
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