赤い 運命

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翌日私は、この手帳を南ちゃんに返すべく何度もチャレンジしたが上手くいかなかった。 タイミングと勇気が合わず、結局放課後まで引っぱってしまった。 「た、た、た立花さんっ。」 放課後、立花さんの後を追い一人になるタイミングでなんとか声をかけた。 「あら、喜来さん。何か用かしら?」 彼女の華麗に振り返る姿はとても画になった。 ふわりとなびく髪。 女子の私でも、少しドキリとする可憐な少女。 (えぇ匂いするやん・・・・) 「?」 「あっ。え、と、、、あのぉ」 (くっ。私の様な陰キャには、彼女は眩し過ぎて話しかける事すらおこがましい行為に思える。) 「喜来さんから、話しかけてくれるなんて珍しいわね。どうしたの?」 立花さんはニコッと、はにかんで見せた。 (あっ。眩しっ。) (目が、目がぁーーーーー。) 「ホントに、どうしたの?」 無言になってしまった私を心配するように、顔を覗き込む。 (あっ。近い近いっ。はわわわわわ。) 「ごめんね。少し急いでいて、また用事があったら声を掛けてね?」 さすがの立花さんも、諦めて踵を返してしまった。 (やばい、行ってしまう、、、。) 「ああっ!た、て、立花さんっ!」 私にしては、かなり大きな声を上げてしまった。 「もぉ〜。なぁに?喜来さん。私にのこと、からかってるでしょーー。」 またも、笑顔で振り返る立花さんだったが、たちまちにその表情は青ざめていく。 私は、両手で彼女の手帳を差し出していたからだ。 先に声を発したのは、立花さんだった。 「見た?」 ここで『何を?』なんて言う程、無粋な事はしない。 というか、出来ない。 この手帳を、立花さんに渡す行為こそが中身を確認した事を証明してしまっているからだ。 「あ、う、うん。チラッと・・・ちょっとだけ・・・・眺める程度に、、、。」 (ごめんなさい。端から端まで全部見ました。) 「そう。」 立花さんは、思いのほか冷静で。 慌てる素振りも無い反応だった。 「ご、ごめんなさいっ。持ち主に返さなきゃって思って、、、、。」 (これは、いちようウソじゃない。) 「そう。ありがとう。」 私が差し出している手帳に、彼女の手がかかる。 「た、立花さん。有馬君のことっ・・・」 私は、直視できず教室の角へ視線送る。 (何を言ってるんだ。私は、、、。そしてどこを見ているんだ。) ピクッと一瞬動きが鈍くなった様に感じたが、彼女はそのまま手帳を受け取り鞄へ仕舞った。 「そうよ。私は有馬君が好き。有馬圭吾君が好きよ。」 凛とした表情で、私の目を見てハッキリと言った。 私は、未だ教室の角に張っている小さい蜘蛛の巣に視線を固定している。 「はぁ。」 彼女は一つ大きなため息をついた。 「正直、引いたでしょ?ストーカーみたいで。」 私は、必死に首を振った。 首を横に、心は縦に、、、。
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