赤い 運命

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「いや、気を使わなくて良いから。自分でもわかってるから。」 彼女はそれでも、凛とした表情を崩さない。 私みたいな日陰者にはやはり眩しい。 「た、立花さん。な、何でそこまでして、、?」 「決まっているじゃない。好きだからよ。」 彼女は即答する。そして穏やかな口調でこう言った。 「喜来さん。運命って信じる?」 (は、運命?。また陳腐な言葉を・・・でもなんか最近聞いたような。) 「う、うん。信じる。」 「そう。」 彼女は、ふぁさりと髪をなびかせ笑みを浮かべる。 「私も信じてる。そして、私の信じる運命は、意中の相手とのイベントの連鎖よ。運命は自分の手で掴み取るモノだとも思ってる。他人に委ねるんじゃなくて、自分の努力で。」 (熱いな。) 「努力、、、、。」 「そう。努力よ。だって止まっていたら、、、待っていても何も始まらないじゃない。私はそんなの耐えられない。」 (私が聞いている運命とは、また少し違う解釈。) 私はだんだんと目の前にいる少女の事がもっと知りたくなった。 「で、でも、それってなんだか。そんな運命、、、作りモノみたいに、、」 「良いじゃないっ。作りモノだって。」 「でも、そんな仕組まれたモノ、、みんなの思う運命とは、、、」 「良いじゃないっ。仕組まれていたって。みんなと違っていたって。」 彼女の言葉は力強い。 先ほどまで感じていた華麗で可憐なイメージは既に存在しておらず、言い表すならこれは【苛烈】のひと言だ。真っ赤に燃える上がっている。 華麗で可憐な苛烈な少女。これが立花 南だった。 (これが俗に言う、3Kというやつか。) 俄然興味が湧いてきた。 その後も立花さんは続ける。 「運命的な出会い?衝撃的な出会い?一目惚れ? ばっかみたい。」 (まだ、熱が上がってきたぞ。火傷しそうだぜ) 「そんな特別な、、、。最初の出会いがなかったら、もう運命とは呼んではいけないの?私みたいに小さい頃から友達だった子は、もう運命の出会いから外れてしまっているの?」 (たしかに、立花さんの考えにも一理あるのかもしれない。) 私はいつしか、立花さんと目と目を合わせていた。 (たしかに、幼馴染キャラは負けキャラが多いよな。それは私も昔から許せなかった。いつも、途中から現れるヒロインに最後の最後に持っていかれるもんな。) 「だから私は、私なりに運命を演出してみせる。」 「あと、有馬君には絶対迷惑はかけないっ」 私はこの子に全くといって良い程、嫌悪感を感じていない。 むしろ清々しさすら感じている。 そこで私は気づいた。 この子のそれは、ストーカー的なモノでは無く、 ただただ健気なんだ。 きっと、純粋に健気なだけなんだ。 そう思うと、無性に目の前に少女が可愛く思えてくる。 「た、立花さん。もういっそ、こ、こ、告白してみては、、、どう?」 私は、聞こえるか聞こえないかの声でボソボソと呟いた。 「えっ!こ、告白?」 (あっ。ちゃんと聞こえてたんか、、、) 「そ、そ、そう。こ、告白してみたら。どう、、、かな?  立花さん、か、可愛いんだし。」 私にしては、息継ぎ無しこんな長文を口にするなんて珍しいものだ。 立花さんはくねくねし始めた。 「そ、そんな事。私が告白だなんて、、だめ。恥ずかしい。」 彼女は、頬を赤らめモジモジしながら上目遣いで私を見た。 ブハァッ。 私は、一瞬鼻血が吹き出したかと思った。 そのくらいの破壊力がそこにはあった。 (苛烈からのギャップは反則だろぉ。推せる。)
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