8人が本棚に入れています
本棚に追加
「いや、気を使わなくて良いから。自分でもわかってるから。」
彼女はそれでも、凛とした表情を崩さない。
私みたいな日陰者にはやはり眩しい。
「た、立花さん。な、何でそこまでして、、?」
「決まっているじゃない。好きだからよ。」
彼女は即答する。そして穏やかな口調でこう言った。
「喜来さん。運命って信じる?」
(は、運命?。また陳腐な言葉を・・・でもなんか最近聞いたような。)
「う、うん。信じる。」
「そう。」
彼女は、ふぁさりと髪をなびかせ笑みを浮かべる。
「私も信じてる。そして、私の信じる運命は、意中の相手とのイベントの連鎖よ。運命は自分の手で掴み取るモノだとも思ってる。他人に委ねるんじゃなくて、自分の努力で。」
(熱いな。)
「努力、、、、。」
「そう。努力よ。だって止まっていたら、、、待っていても何も始まらないじゃない。私はそんなの耐えられない。」
(私が聞いている運命とは、また少し違う解釈。)
私はだんだんと目の前にいる少女の事がもっと知りたくなった。
「で、でも、それってなんだか。そんな運命、、、作りモノみたいに、、」
「良いじゃないっ。作りモノだって。」
「でも、そんな仕組まれたモノ、、みんなの思う運命とは、、、」
「良いじゃないっ。仕組まれていたって。みんなと違っていたって。」
彼女の言葉は力強い。
先ほどまで感じていた華麗で可憐なイメージは既に存在しておらず、言い表すならこれは【苛烈】のひと言だ。真っ赤に燃える上がっている。
華麗で可憐な苛烈な少女。これが立花 南だった。
(これが俗に言う、3Kというやつか。)
俄然興味が湧いてきた。
その後も立花さんは続ける。
「運命的な出会い?衝撃的な出会い?一目惚れ? ばっかみたい。」
(まだ、熱が上がってきたぞ。火傷しそうだぜ)
「そんな特別な、、、。最初の出会いがなかったら、もう運命とは呼んではいけないの?私みたいに小さい頃から友達だった子は、もう運命の出会いから外れてしまっているの?」
(たしかに、立花さんの考えにも一理あるのかもしれない。)
私はいつしか、立花さんと目と目を合わせていた。
(たしかに、幼馴染キャラは負けキャラが多いよな。それは私も昔から許せなかった。いつも、途中から現れるヒロインに最後の最後に持っていかれるもんな。)
「だから私は、私なりに運命を演出してみせる。」
「あと、有馬君には絶対迷惑はかけないっ」
私はこの子に全くといって良い程、嫌悪感を感じていない。
むしろ清々しさすら感じている。
そこで私は気づいた。
この子のそれは、ストーカー的なモノでは無く、
ただただ健気なんだ。
きっと、純粋に健気なだけなんだ。
そう思うと、無性に目の前に少女が可愛く思えてくる。
「た、立花さん。もういっそ、こ、こ、告白してみては、、、どう?」
私は、聞こえるか聞こえないかの声でボソボソと呟いた。
「えっ!こ、告白?」
(あっ。ちゃんと聞こえてたんか、、、)
「そ、そ、そう。こ、告白してみたら。どう、、、かな? 立花さん、か、可愛いんだし。」
私にしては、息継ぎ無しこんな長文を口にするなんて珍しいものだ。
立花さんはくねくねし始めた。
「そ、そんな事。私が告白だなんて、、だめ。恥ずかしい。」
彼女は、頬を赤らめモジモジしながら上目遣いで私を見た。
ブハァッ。
私は、一瞬鼻血が吹き出したかと思った。
そのくらいの破壊力がそこにはあった。
(苛烈からのギャップは反則だろぉ。推せる。)
最初のコメントを投稿しよう!