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本家に集う
本家の屋敷は中央に「寝殿」と呼ばれる「主殿」があり、「寝殿」の東西両側には「コ」の字形に「対殿」が配され、それぞれの屋敷は「西対」、「東対」と呼ばれていた。
屋敷には続々と人が集まって来て、急ににぎやかになった。
「皆にも紹介しよう。こちらは石棺守をつとめる東雲キヨ殿と、キヨ殿の孫娘東雲奈津殿だ」
良く分からぬまま、定範に紹介された二人の女性と挨拶を交わす。
対面を済ませると、定範は理人らに声をかけた。
「守護の部屋は東対に用意してある。食事までしばらく休むが良い」
「あっ、屋敷の中を見学してもいいですか?」
「西対は『命様』のお住いとなるため、立ち入りはできぬ。それ以外は自由にしていいぞ」
雪乃の質問に定範はそう答えると、石棺守の二人を従えてせわしなく広間を出ていってしまった。
「命様って?」
首を傾げる右京に高良が説明する。
「命様とはこの本殿の結界を張っている姫君のことで、平時は石棺の中に封印されておられる。先程お会いした石棺守のお二人は、命様直属の侍女たちだ」
「いいよなぁ、命様ってロマンだよな。深窓の姫君って感じ? 俺の予想では絶対美人だと思うんだよね。ひと目拝んでみたい!」
理人が目を輝かせると、雪乃は理人をギロリと睨んだ。
「何がロマンよ!」
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