50人が本棚に入れています
本棚に追加
隠密機動隊
東京都心にぽっかり広がる広大な緑地、新宿御苑。
その一角に、厳重立入禁止区域とされたエリアがある。
結界に護られた黒塗りの門は常時固く閉ざされ、許可なくしては見つけることすらできない。
「お館様!!」
寝殿造りの広大な屋敷に、世話役松平定範の声が響く。
主殿の広間に置かれた大鏡を前に、背筋をまっすぐ伸ばして鎮座していた若者が定範の声に振り向いた。
「お館様、ご準備を!」
若者は小さく頷くと大鏡に向かって真言を唱える。大鏡はみるみる白く濁り、乳白色の鏡面は何も映さなくなった。
固唾をのんで見守る二人の前に、白い鏡面から男が飛び出してきた。
「うおっ、ほんとにワープした!!」
整った顔立ちに驚きの表情を浮かべて大広間をぐるりと見回していた男はすぐに若者と定範に目を留めた。
男は若者の前に進み出ると板の間に手を付き頭を下げた。
「ご当主様とお見受けいたします」
「いかにも」
黒髪の若者は落ち着き払った声で答える。その優雅な所作は若い見た目にそぐわぬ貫禄を醸し出していた。
「武田家より盟約に従い馳せ参じました。守護・副長、武田理人と申し……」
「きゃあああっっ!!」
理人の口上を女性の悲鳴が遮った。
最初のコメントを投稿しよう!