私のつがい、今すぐに名乗り出てください!

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 翌朝、リズは目を疑った。胸に六角形の痣が出来ている。六角形、蜂の巣の形のこの痣は花蜜病のアピスの紋章だ。 「嘘……。」  この国の誰もが、痣ができた場合の対処法を知っている。花か六角形かどちらかの痣が現れたら国に届け出る義務がある。リズは大声をあげた。 「大変!ノエ!ノエ、来て!」  そこからオルグレン家は大騒ぎになった。  なにしろ昨日結婚が決まったばかりである。念のため、婚約者の胸元も確認してもらったが彼の胸にフローラの印である花の痣はなかったようだ。  国の法律で決められていることなので先方も文句を言わなかった。婚約は破棄になるだろう。  婚約者との手続きは父に任せ、リズは王城へ行くことにした。申請手続きをしなくてはならないからだ。もちろんいつものようにノエも連れて。 「それにしても驚いたわ、まさかこのタイミングでアピスになるだなんて。」 「本当に驚きました。」  ノエの顔色は悪い。朝から大騒ぎになって、彼も朝からやることが山積みだったようだ。 「婚約破棄になるわね。」 「残念でしたね。」 「そうね、理想通りの人だったもの。」  ノエと正反対になるように作られた理想の人ね、と心で付け加えた。 「でもどうせ新しい結婚相手が決まるわ。  ……せっかく最高の相手が見つかったのにね。」  結婚しなくていいんだ!と一瞬喜んだ。  しかし花蜜病ならば必ず結婚をしなくてはいけない。  父がリズを想って選んだ相手と違って、勝手に組み合わされた相手というのはかなりギャンブルではある。昨日までの相手よりずっといいかもしれないし、絶望するかもしれない。  王城の市民窓口に行き、窓口の男性の指示に従いアピスの手続きをした。  リズのつがいとなるフローラはまだ申請をしていないようだった。  気が焦るリズは、もしかしたらフローラがこの窓口に来るかもしれないと思い三十分程待ってみたが、フローラは現れなかった。  相手側の申請があり次第、リズに連絡が来るとのことで一旦帰宅した。  いつものようにノエに紅茶を入れてもらい、話を聞いてもらう。 「どんな相手なんだろう。」 「ソワソワしてますね。」 「そりゃそうよ!ランダムに相手が決まってしまうのよ。」 「どんな相手がいいですか。」 「それはもちろんお金持ちよ!」  そう言ってからリズは思った。今まではノエと正反対の相手を挙げていたが、彼と似た男性の方がいいかもしれない。  いや……ノエと似た男性であれば、ノエを重ねてしまって切なくなるだろうか。  ノエでないなら誰でも同じなのだから。
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