17 憧れか憎悪か

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「龍……」  清睦(きよちか)さんは驚き、紫水(しすい)様から目を逸らせずにいた。  私の目には人間の姿にしか見えず、清睦さんがなにを見ているかわからない。  ただわかるのは、清睦さんの顔から笑みが消えたということだけだ。 「小僧。足をどかせ」    スケッチブックを見た紫水様の声は、怒りに満ちていた。  足をどかした瞬間、(あお)ちゃんが駆け寄り、スケッチブックを拾い上げ、泥まみれの絵をなんとか元に戻そうとしてくれる。  でも、破れてしまった紙は元には戻らず、悲しい顔をして私のところまで持ってきた。 「世梨(せり)さま、ごめんなさい。困ってるみたいだったから、紫水さまをお呼びしてしまいました」 「いいえ。蒼ちゃん、ありがとう。私のために紫水様を連れてきてくれて」 「えへへ。間違ってなくて、よかったです」  スケッチブックを受け取り、頭を撫でると、蒼ちゃんは褒めてもらったことが嬉しいのか、にっこり微笑んだ。  蒼ちゃんは人に近づくため、少しずつ学んでいるところなのだ。  どうしたらいいのか、人の気持ちを考えながら行動している。
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