17 憧れか憎悪か

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 もしかしたら、祖父に清睦さんのことを聞かされていたのかもしれない。 「他の道に興味はない。千秋の弟子になることが、俺の目標だったんだ。俺だけじゃない。母さんもそうだ。けど、千秋は俺も母さんも弟子にしなかった!」 「だが、才能がないと、千秋は言わなかっただろう?」  清睦さんは泣き笑いのような表情を浮かべた。 「俺が気づかないとでも? 祖父の仕事場にあった絵が、すべて物語っている。俺の絵は返しても世梨の絵は飾ってあった。祖父は世梨だけを認めていたんだ」  身内の贔屓目で――とは、清睦さんに言えなかった。  祖父の仕事場にあった絵は、私が庭の花や祖父の下絵を真似た絵の数々だった。  自分が気に入れば、弟子をとると言っていた祖父。  その祖父が気に入り飾ってあったということは、祖父が認めた者である証拠だったのだ。    「世梨。これでわかっただろう? お前はずっと嫌われ者の裏切り者だ。跡を継ごうが、継ぐまいが、本宮からも郷戸からも好かれることはない」  それは、永遠に解かれることのない呪いの言葉だった。  きっとそう思っているのは、清睦さんだけではない。
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