(序)本日、契約妻になりました

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 そのためには、人でありながら、人でない力を持った娘を嫁にする必要があった。  あやかしを父とし、特異な力を持った娘との間に誕生する子供は、あやかしとしての本性を失うことがないそうだ。 「あやかしの血を絶やさぬようにということですよね……」 「そういうことだ」    紫水様の視線が、賑やかな宴席へ向けられる。  招待客に紛れ込んでいる人ではないもの。  私の目からは、人間となんら変わりない姿にしか見えない。 「龍神である俺を恐れず、よく集まったな」  そう言って宴席を眺め、口の端を上げる。  彼もまた人ならぬ存在――龍神だ。  天井近くの 欄間(らんま)に龍を見つける。  郷戸の家の欄間にあったのは、 雲龍文(うんりゅうもん)。  大きな渦の雲の中にいる龍が睨みをきかせて、客人たちを見下ろしている。 「俺から、お前を奪おうと集まった連中が大勢いる」 「私を奪うだなんて、そんなこと……」    両親から捨てられ、養女先からは、いらないと言われた私を誰が必要とするだろうか。
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