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「世梨。俺は他の奴らのように、お前の特異な力に興味を持ったわけじゃない。もうひとつ、お前には名前があるだろう? 俺はそれに興味がある」
私の驚いた顔に、紫水様はしてやったりという顔をした。
「でも、それは……」
「ずいぶんと楽しそうね」
酔いの回った宴席から抜け、こちらへやってきたのは、妹の玲花だった。
微笑む玲花の目は笑っておらず、ぞっとするほど冷たい。
「祝いの言葉なら、受け取ろう」
「お祝い? そんなこと言うわけないでしょ。私を妻に選ばなかったことを後悔するわよって言いに来たの」
自信たっぷりな口調で、玲花が言う。
「誰も欲しがらない世梨を押し付けられて、貧乏くじを引いたわね。この結婚で幸せになれると思っているのなら、大間違いよ」
まだ雪が降り続くのか、遠くで雷鳴の轟く音がした。
体に寒さを感じ、手が震えた。
それは、玲花に対する恐怖心からだったかもしれない。
紫水様は私の震える手に気づき、自分の手を重ねる。
その手はひんやりとしていて、ぬくもりがなく、紫水様が人ではないことを私に教えていた。
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