もう少しの夏

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口にくわえた髪ゴムをさらって あなたはイタズラな横顔 私はポニーテールが結べない 波打ち際へ駆けていった背中を とっさに睨んでみても ハートは素直にドキドキしてる 降ろしたままの髪が そっと海風に流されて 後ろでパラソルの淵がはためく音 いつかは忘れる人なのかしら 砂浜を歩けば足が埋もれていく アスファルトなら自由に歩けるはず 太陽の下で出会って 太陽の下でお別れ ひと夏の思い出はもうすぐすれば 涼しくなる頃は別々の日常ね 一年後同じ夏が巡っても きっともうこんな気持ちにはなれない いつもはからかってばかりなんだから 昨日はナンパから守ってくれたのに もう少しこの季節の中にいたい 夕暮れになって 「ごめん」とあなた 髪ゴムと三ツ矢サイダー サイダーを一口飲んで 「それはあげる」 甘酸っぱい恋の味がした
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