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「僕も花井さんを初めて見た時、運命だ、って思ったんですよ!」
その人は、泡の消えかかったビールのグラスを握りしめながら力強くそう言った。
「へえ……」
多分、私のテンションの低さに彼の頭の中は?マークで一杯なんだろう。
自分から話を振っておいてこれだから……。
でも、私が言ったのは、あなたのことじゃない。
条件の一つとして、相手には必ず訊いているのだ。
私は適当に相槌を打ちながら、冷たくなったねぎまを口に運ぶ。
黄色い液体が入ったグラスの表面を、小さな滴がつーっと伝うと、ゴツゴツとした木製のテーブルとの間に水溜りを作っていった。
「今日はありがとうございました」
居酒屋を出たところで私は丁寧に頭を下げてみせた。
「……よろしかったら……、またお会いできますか?」
「また、機会がありましたら……」
無表情にそう答える私に、彼もある程度察していたのだろう、ボサボサ髪を掻きながら下を向く。
「……そうですね。ではまた、機会がありましたら……」
彼はそう言うと慌てたように駅とは反対の方向へ消えて行った。
合コンで知り合った人。婚活アプリで良い感じになった人。もうこれで何人目だろう……。
申し訳程度に小さな星が煌めく夜空に向かって、私は大きく息を吐いた。
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