最終章~証言~

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壱能と笠間津は皆よりも先に 現場を後にし、科捜研へ向かった。 到着すると、 米津から連絡を受けた責任者が出迎えた。 安置室に並べられた遺体の中に 胎児もいた。 「もう大丈夫だよ。」 優しく話かけると白く小さな光が 天井をすり抜けていった。 安置室に 椅子を向かい合わせに置いて貰うと 先程と同じように 彼女達と話を始めた。 山瀬、増田、父親、 そして最後に母親の順に。 「貴女は何故、 自分の息子にあれ程までに 執着したんでしょうか?」 母親はニヤニヤ笑いながら話始めた。 「だって・・・ 瓜二つなんだもの・・・彼に。」 「彼とは、孝良さんですか?」 「んなわけないでしょ。 私の息子達は佐々木原の子よ。 佐々木原 真一 (ささきばら しんいち)の!」 汚職疑惑で世間を騒がせた 政治家の名前だった。 辺見家の長男が亡くなった同じ年に 持病が悪化し 若くしてこの世を去っていた。 「孝良さんは全てご存知ですか?」 「知ってるわ。 彼がそれでも良いから 結婚してくれって言ったのよ。 自分の遺伝子が残せないってのも 知ってたし。」 どういう意味か 更に詳しく聞こうとすると 条件を出してきた。 息子の所に行かせて欲しいと。 約束は出来ないが 出来るだけ頑張ると伝えると 彼女は話始めた。 「夫は種無しよ。 液体は出るけど中身が全くない、 無精子症って言ってかしら。 元々、佐々木原とは不倫してたの。 だから籍を入れれなかった。 彼は会う度お金を持って来てくれたわ。 子供達の為にって。 でも汚職騒ぎが出てからは 一切来なくなった。 だから夜の仕事をして夫と出会った。 全部話しても受け入れてくれたから 結婚した。 長男の香(かおる)が死んで 立て続けに彼も死んで・・・ 本当に辛かった・・・ 気付いたら小さな彼が目の前に居たの。 どうしようもなく彼を欲した。 ダメだと思いつつも カイトを産んだ時に 病気が見つかって卵巣を両方取ったから 妊娠はしないし大丈夫 って私の中で誰かが囁いたの。 止められなかった。 夫はそんな私達を見て興奮してたわ。 歳を重ねるごとに マンネリ化してたから 刺激的だったのかもしれないわね。 カイトに好きな人や 恋人が出来る事が許せなかった。 また2番目にされるって感じた。 香は私しか見なかったのにって 比べたりして・・・ 夫に胸の内を話しても カイトの味方しかしなかった。 終いには説教まで始まったし。 腹が立ったわ。だから殺したの。」 彼女が全て話し終え 壱能も聞きたい事を全て聞くと 成仏させた。 署に戻ると壱能は 男性用休憩室のソファーに 横になって寝始めた。 笠間津は映像を 2枚のディスクにダビングして 1枚は保管庫に仕舞い もう1枚は米津のデスクに置いて 帰宅した。
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