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「祭、まじか…」
放課後誰も居ない公園で北見、黒川、橘、俺で温かい缶コーヒーを握りしめながら座り、
橘がぽつりと呟く。
今日の朝、祭が退学したことを担任が知らせた時、クラスはどこかほっとしたような雰囲気が漂った。
それがとても腹立しかった。
お前らが祭を避けたからこんな風になったんだ、そう悔しさに叫びたかったが実際はただこぶしをきつく握り固めることしか出来なかった。
黒川、橘、北見も同じようなもので、
三人とも憤慨のような後悔のような思いを抱えてこの公園に自然と集まった。
「…ほんとあのクラスきもい」
北見は吐き捨てるようにそう言って、足元の小石を蹴り飛ばす。
「みんな、AIかもしれない人間となんか関わりたくないのかな」
橘が僅かに降り始めた雪を眺めながら言った。
先程吐き捨てた北見もそうかもな、そう橘に同意した。
「人型AIは人じゃなければ友達でもないことだろ、ていうかそもそもAIかどうかも分かんないけどな」
黒川が飲み終わったらしい缶コーヒーを足でぐしゃっと潰す。ひしゃげた缶が無様に足元に転がった。
「俺、祭が人型AIだったとして何がダメなのか分かんねぇ。だって祭がAIだったら、今まで俺たちが話してた祭もぜーんぶAIってことだろ?だけど祭と話してて楽しかったじゃん、祭笑ってたじゃん、優しかったじゃん」
頭を掻きむしっていた手をおいて黒川はこぼすように小さく言った。
「その何が変わるってんだよ」
今やどこもかしこもAIをはじめとする最先端技術で人間なんか必要ないくらい便利な機能に溢れたこの世界。
AIは確かに人間を超えているかもしれないし、いつかAIが人間を絶滅させるかもしれない。
でも。
「ごめん、俺もう行くわ!」
ちらつく雪を蹴散らして駆け出す。
ずっと前から気づいてた。
佐藤祭がAIだってこと。
それでも俺はお前が好きだったよ。
それを今伝えたかった。
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