小さな観察者

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『拝啓  本格的な猛暑が到来しましたが、いかがお過ごしでしょうか。  こちらは連日35度を超えています。    私はここ数日、広島市内の××電停にて活動をしています。  先程、○○社の社員二名(対象者の顔については添付写真を参照ください)が、政府に対する不満を述べる言動や、コンプライアンス違反、ハラスメントに繋がる可能性のある発言などを繰り返し行なっていました。  彼らが我が国において相応しい人間かどうか、審議及び判断いただきたく。    尚、対象者は路面電車に乗り込む前に、駅のベンチに空き缶をポイ捨てしていくという愚行をおかしたことも合わせて報告させていただきます。    厳しい暑さが続きますので、水分補給をしっかりしてお互い体調には気をつけましょう。    敬具』 データを送った瞬間、私は「ニャ」と思わず鳴いた。 私の仕事は単純明瞭。 この国に対してリスクをおかす可能性のある人間を見つけては、都度政府にデータを送信、通報する。 危険人物と判断された人間は政府によってそれなりの処分が下されることになるが、それは私の業務範囲外、預かり知らぬことだ。 とにかく私の見た目はただの猫。 けれど本当の姿は、一昔前に流行ったネコ型ロボットのリアル版ならぬ、進化版。 だから私、水分補給する必要なんてなかったわ。 まだまだ学習が足りないな、と反省して、私はまたキョロキョロとあたりを見渡した。 次のターゲットはどこにいるかにゃ。 私の名前は超ネコ型AIロボット【EYE(AI)572号】。 今日もしっかり働きます。
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