森の精霊

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 「嘘。ほんとに鹿?」  動物園でしか見たことがなくて、それも檻の向こうだったから大きさがよく理解できなかった。  運転席から見るエゾシカは、想像よりもずっと大きかった。  (かす)かに血の気が引く。  私が運転しているのは軽自動車。数頭どころか一頭に襲われただけで大破しそうだ。  先頭にいる、(つの)の立派な鹿が、こちらに頭を向けてきた。  見られている  群れのリーダーだろうか。  偶然ではなく、私の存在を確認するために視線を向けてきている。  視線が合うのが分かる。
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