森の精霊

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 「言う必要なんてないのか」  日帰りのドライブだから、誰にも話していない。しかも、あの街に行くと聞けば、幹線道路を通ったと思うだろう。  私が湖に沿った道を選んだと考える人はいないはず。  それなら、驚くような遭遇を説明する必要はないと気づいた。  大切な記憶として心にしまっておけばいいのだと。  森の奥に、もう一度視線を向ける。  きっと、二度と会うことはないだろう。  一度だけの、奇跡のような出会いだと思った。
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