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ピンポーン
玄関のチャイムが鳴った。
こうなったら、ありのままの現状を見せるしかない。
俺はそっと玄関の扉を開けた。
「はい...」
「初めまして。紅林と申します。」
「はい、どうぞ。」
「失礼します。」
紅林と名乗るハウスキーパーは、爽やかな笑顔を振りまきながら、部屋に足を踏み入れた。
「足の踏み場がないので気をつけてください。」
俺は終始、俯き加減で話した。
「これは...やり甲斐があります。」
部屋を見回し、紅林が言った。
プロ意識に火がついたのだろうか?
「美琴様から、公近様の身の回りのお世話と、食事の管理を依頼されていますので、早速、部屋の片付けから始めてもよろしいでしょうか?」
「俺は構わないけど、むしろ、助かります。」
「かしこまりました。詳しい契約についての説明は、夕飯の時にお時間を頂くことは可能でしょうか?」
「はい、大丈夫です。」
「ありがとうございます。」
礼儀正しいイケメンハウスキーパーは、早速、作業に取り掛かった。
「お食事がご用意できましたらお呼びしますので、公近様は私のことはお気になさらずお過ごしください。」
「あ、はい。」
と言われても、人見知りな上に、普段から会話を交わす人と言えば担当編集者と、世話焼きの姉くらいの俺が、この状況でいつも通り過ごせる訳がなかった。
「あの、紅林さんは毎日来られるのですか?」
「美琴様からは月~金と依頼されております。」
まじかよ...
ほぼ毎日じゃないか。
毎日、この堅苦しい話し方で過ごすのか?
無理だ。
俺は意を決して紅林に言った。
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