お金はあるが、生活能力はない

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「あの...ハウスキーパーとか、契約とか、正直よく分かってないんだけど、毎日、顔を合わせるならもう少し気軽に話しませんか?」 すると、紅林は俺の目を見て言った。 「公近様が、快適に過ごせるのであればそうします。」 「狭いけど、ここに座ってもらえますか?」 俺はソファーの上の物を床におろし、紅林と並んで座った。 「まず、様はやめてください。」 「それではなんとお呼びすればよろしいですか?」 「公近で。」 「さすがに呼び捨てはできませんので、公近さんでどうでしょうか?」 「うん、それでお願いします。俺は紅林くんでいいかな?」 「はい、公近さんの呼びやすい呼び方で構いません。」 「それから契約についても教えてもらえる?」 すると、紅林は分厚い書類の束を鞄から取り出した。 「公近さんのプランは、基本コース+αとなっております。身の回りのお世話と食事の管理を基本に、その他、僕に依頼したいことがあれば気軽にお申し付けください。」 「あ、私から僕になった。」 「その方が公近さんは話しやすいかなと思いまして。」 「うんうん。堅苦しいのは苦手なんだ。」 「それでは、説明も終わりましたので、僕は掃除に取り掛かろうと思いますが、公近さんはどうなさいますか?」 「俺は仕事部屋に戻るよ。何かあればいつでも呼んで。」 「分かりました。」 俺はしばらく掃除をしている紅林を眺めていた。 「どうかしましたか?」 「ごめんな、こんなに散らかして。」 「大丈夫ですよ。これくらいすぐ片付きます。それよりも小説頑張ってください。」 「俺のこと知ってるのか?」 「美琴さんから聞きました。」 「そういうことか。」 俺の小説を読んでいるわけではないんだな。 「僕も好きですよ。公近さんの小説。」 「ええ...」 「繊細なのに、エロくて、癖になりそうでした。」 「う、うん...」 なんと反応するのが正解なのだろう? ひとまず、この場から立ち去りたい衝動に駆られた俺は、自室へと逃げ込んだ。
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