+αの誘惑

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「朝ごはん作りますね。」 「うん。」 俺は歯ブラシを咥えながら答えた。 そして、来客用の歯ブラシを紅林に手渡した。 「ん。」 「ありがとうございます。」 朝から洗面所で並んで紅林と歯を磨いている。 変な感じだ。 それなのに、鏡に映る紅林は優しい笑顔を浮かべている。 対して俺は、目の下のクマがひどく、疲れきった顔をしていた。 「公近さん、疲れてますね。」 「まぁ、ここの所、ろくに寝てなかったからな。」 「それなら今日は疲れに効くようなメニューにします。キッチン借りますね。」 「あ、待った。」 俺は寝室へ行き、急いで紅林の着れそうな服を持ってきた。 「どうしました?」 「着替え。俺ので良ければ。」 「依頼主の方に服を借りるなんて申し訳ないです。」 「俺のベッドで寝てた奴が言っても説得力ないけど?」 「確かに笑それでは、ご好意に甘えて。」 そういうと、紅林はその場で着替えを始めた。 「おい!いきなり脱ぐな/」 「もしかして、男の裸みたことない?」 「そういう訳じゃ.../」 「小説の描写があまりにも鮮明だったから、見た事くらいあるのかと思ってました。」 「どこまで俺の小説読んでるんだよ/」 「言ったでしょ?全部です。それはもう、細部まで読み込みました。」 「いいから、早く服を着ろ!/」 「はい。笑」 「何笑ってるんだよ/」 「こんなに純粋な公近さんが、あの物語を書いていると思うと驚きで。」 「理想を壊してわるかったな。」 「いえ、その逆です。公近さんに興味がわきました。」 紅林は俺をそっと壁に追いつめた。 「だから、距離が近い//」 「何もしません。」 「ぐぅ……」 その時、俺の腹が鳴った。 「ふふっ、急いで朝食の支度しますね。」 紅林は何事もなかったかのように、朝食の支度を始めた。 「くそ……あいつどういうつもりだ?/」 俺は力が抜け、その場に座り込んだ。
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