1158人が本棚に入れています
本棚に追加
『佑弥くんが先に、私のこと見つけてね』
新大阪の駅で…いつも彼を先に見つけるのは私だった。最後のデートの時だけ…佑弥くんが先に私に声を掛けてくれたけど。
もう二度と聞けない声を少しでも聞いていたくて、気付けばそんなことを口走っていた。
「ん…当たり前やん。お前より先に見つけてそのまま捕まえて─…絶対に、離さへん。」
想像よりもずっと上をいく答えをくれるから…堪えていた涙が溢れはじめる。
『──佑弥くんっ、』
「ん?どーしたん、莉久」
『あのね、私…佑弥くんが好き、』
「……なんやねん今更、そんなん知ってるわアホ。てかお前より俺の方がもっとお前のこと好きやって…いつも言うてるのに、」
『──…ありがとうっ』
私を好きになってくれて、ありがとうっ。
『明日早いから…もう切るね?』
「うん…遅にごめんな?おやすみ…莉久」
『──…ばいばいっ、佑弥くん』
おやすみ…じゃなくて"ばいばい"って言ったのは…ちょっとした強がり。これくらいは許して欲しい。私だって神様じゃなければ仏でもない。佑弥くんを好きな…一人の女の子として、"ばいばい"を言いたかった。
約束の日─…新大阪で佑弥くんが会うのは莉久じゃない、梨麻さんだよ。
待たせてごめんね、ありがとう。
幸せになってね、佑弥くん。
最初のコメントを投稿しよう!