海〜Umi〜

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手に持っていたスマホが地面に転がる音が響いた。俺が拾うよりも先にぶつかった人間がスマホを拾い上げ─… 「──はい、」 っと、俺に手渡してきたとき─…はじめてその人間の顔を見た。 『あ…すいません─…どうもっ、』 御礼を言ってすぐ…目が合った女の顔を見て、心臓が飛び上がった。いやドキッとしたというより、驚いて跳ね上がったって意味で。 『─…リマ、やんな?お前っ…梨麻やん!』 もう何年も意図的に呼んでなかったはずの名前が口からスラッと飛び出した理由は…この俺が一番よう分かってる。この女にはほんま、長いこと苦しめられたから。 「佑弥っ、久しぶり…!」 "俺に会いたかった"─…みたいな。そんな顔をして一歩近付いてきた梨麻から…さりげなく距離をとるように一歩後ろに下がった。 俺に距離を取られたことに傷付いたのか…梨麻が少し表情を崩す。
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