海〜Umi〜

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だから今更、目の前で泣いている過去の女…梨麻に、俺がかけてやれる言葉なんて何もない。 『ごめんな、梨麻…待ってあげられへんかって…ごめん』 確かに長いこと引きずったし、結構苦しんだ方やと思う。それでも、それは俺の中ではもう過去の話…俺が今好きなのは梨麻(リマ)じゃない…莉久(・・)や。だから中途半端に優しくしたるつもりもない。 『梨麻が元気そうで良かったわ、これでようやく俺もお前の呪いから解放された気ぃする。声掛けてくれてありがとうな?悪いけど、いま人待ってんねん、俺。色々話したいことあるけど…また今度大学の連れとかみんな呼んで集まろう』 二人きりではなく、みんなで─…っと言う意味が分かったのか…梨麻は瞳に溜まっている涙をギュッと目を瞑って出し切ってから…切なそうに微笑んで…─再び、暗い表情を浮かべた 梨麻のことが気にならん訳じゃないけど…莉久から何の返信も来やんし、一向に姿を見せへん莉久に不安が募り始める 「─…佑弥…ごめんっ、私…最低なことした」 突然…俺に謝った梨麻が、手に持っていたカバンの中から一通、手紙を取り出した "佑弥くんへ" やけに見覚えのある字体に、嫌な予感がした。
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